ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)
第七回「ライカカメラ社オーナーDr.カウフマン氏が語るライカの明日」
1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

プレスコンファレンスで、X1、M9を手元に置き、質問に答えるDr.カウフマン氏(ライカM9、ズミクロン50mmF2沈胴で撮影)
Dr.カウフマン氏は、1953年ドイツのマンハイムに生まれ。1973年にはシュトゥットガルト大学で文学博士号を取得し教員となり、その後ビジネスコンサルタントを開業し、数々の事業経営に参画。2004年には資産運用会社であるACM社社長としてライカカメラ社の大株主となり、2009年にはライカカメラ社の97.1%の株式を取得しています。Dr.カウフマン氏は、過去にライカカメラ社の社長を務めたことがありますが、そのときにはかなり早い時期からノクチルックス50mmF0.95 ASPH.の登場を予告したりしましたが、いまは確固たるオーナーとして存在しているわけで、それだけにどのような話が聞けるか興味津々でした。
お話しは、ライカの歴史からこれからのライカの在り方まで、約2時間にわたる講演、30分の質疑応答との流れでしたが、その中で私なりに興味のあった部分をピックアップしてみました。
2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

講演会場風景。左はカウフマン氏、右は当日のコーディネータで通訳をされた竹田正一郎氏(ライカX1で撮影)
まずライカカメラ社の現況としては、
☆ライカの製品は、技術に裏付けされたプレミアム製品を目指す。
☆ライカの製品は、置き換えられない独自のデザインである。それはドイツのデザインであり、ヨーロッパのデザイン思想に根付いた簡素性である。
☆ライカは価格競争には加わらない。
☆ライカは新しい市場を作りたい。その一例として、中判一眼レフのライカS2を発売した。
☆製品を作るにあたっては世界中の高度な部品を使いたい。
☆製品は技術的に高度なものを作っていく。その一例として非球面レンズを2面に使ったズミルックス35mmF1.4ASPH.を発売した。
☆ライカはプロ用映画機材に進出する。[2010年に開かれたラスベガスでのNABショーにて、バンドプロ社からPLマウントで10本のズミルックス-C16mmT1.4、18mmT1.4、21mmT1.4、25mmT1.4、35mmT1.4、40mmT1.4、50mmT1.4、65mmT1.4、75mmT1.4、100mmT1.4が紹介されています。カウフマン氏によると、今後さらに2本が追加される予定で、いずれも画面サイズは24×36mmをカバーするそうです]
また、現在のカメラ技術全般に対しては、
★ライカは、撮ったままの画像で見たままに写るのが一番いいと考えているので、電子修正技術は取り入れない。そして、どんなに電子修正技術が進んでもレンズ技術を抜くことはできないと考える。
★デジタルカメラの画素数はこれからも進化するだろうが、ミラーボックスやシャッターの不要となる技術が登場するのではないだろうか。
★普及カメラには小さいレンズを5~6本使い、高級レンズ並みの高品質な画像を得るような技術ができるだろう。
★普及品には秒間10コマ、60コマという速度がどれだけ意味があるのだろうか。同様にAFのスピードも全員がスポーツ写真を撮るわけではないということがある。
Dr.カウフマン氏によると、さらに次のテーマは「人間と画像」ということで“なぜ人間は写真を撮るのだろうか”ということだそうだ。写真の画像は何の目的か、それはカメラ産業にとって何か。それは、(1)思い出、(2)生きるため、(3)芸術のためであり、これを念頭に置きカメラ産業を考えていくという。
最後に、ライカとは、追憶の未来であり、追憶の芸術であり、ライカは文化である。ラテン語の格言には『芸術は長く、人生は短く』とある。
以上が、Dr.カウフマン氏が当日話した主な内容です。そして、いかにも文学博士らしいセンスを持ち合わせた方だと思うわけです。また、この時期ビジネスを拡大するために中判のS2システムの発売に加え、プロ用シネレンズの分野に進出するというのもなかなか当を得ています。
というのもデジタル一眼レフでのフルHD動画がかなり、新しい動きとしてでてきていますので、カール・ツァイスも含めて一気にこの分野に参入というわけです。そしてシネレンズの分野で「ライカかツァイスか」という新しい競争が始まることになるのでしょうか。この分野には、キヤノン、フジノンと日本の老舗メーカーもあるわけですし、さらにスチル用としてはニコン、コシナ/カール・ツァイスの存在もあるわけです。
いずれにしましても、これだけの企業(写真)理念をもった経営者はどれだけ世界にいるだろうか? などとも考えてしまうわけですが、それはそれ、歴史が明らかにしてくれるでしょう。
(本レポートは、当日の通訳をメモした程度であるために、ニュアンスの相違があることをご了解ください)
