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ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)

第四十六回「8枚玉と6枚玉のズミクロン35mmF2を比較」

コーナー名
ライカに始まりライカに終わる
著者
市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)
対象機材・テーマ
8枚玉と6枚玉のズミクロン35mmF2を比較
概要・導入
6群8枚構成の「第1世代ズミクロン35mmF2」は通称8枚玉≪図1≫と呼ばれています。設計はカナダライツで1958年に発売されましたが、当初はカナダで製造され、後にドイツで製造されるようになりました。今回ここで採り上げたのはドイツ製です。 一方、4群6枚構成の「第2世代ズミクロン35mmF2」は通称6枚玉≪図2≫と呼ばれ、1969年に登場しましたが、初期のカナダライツ製と後期のドイツ製に分かれます。この初期型には絞りリングを動かす突起が設けられていて通称「ツノ付き」と呼ばれ、後期型ではツノはなくなっています。今回の対象レンズはツノ付きです。8枚玉も6枚玉も光学系としてはどちらも変形ガウスタイプ…

1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

6群8枚構成の「第1世代ズミクロン35mmF2」は通称8枚玉≪図1≫と呼ばれています。設計はカナダライツで1958年に発売されましたが、当初はカナダで製造され、後にドイツで製造されるようになりました。今回ここで採り上げたのはドイツ製です。
一方、4群6枚構成の「第2世代ズミクロン35mmF2」は通称6枚玉≪図2≫と呼ばれ、1969年に登場しましたが、初期のカナダライツ製と後期のドイツ製に分かれます。この初期型には絞りリングを動かす突起が設けられていて通称「ツノ付き」と呼ばれ、後期型ではツノはなくなっています。今回の対象レンズはツノ付きです。8枚玉も6枚玉も光学系としてはどちらも変形ガウスタイプです。

≪図1≫第1世代ズミクロン35mmF2、6群8枚(画像をクリックすると大きく見られます)
≪図2≫第2世代ズミクロン35mmF2、4群6枚(画像をクリックすると大きく見られます)
≪写真1≫左からズマロン35mmF2.8、8枚玉ズミクロン35mmF2、6枚玉ズミクロン35mmF2(画像をクリックすると大きく見られます)

外観的にはどうでしょう。≪写真1≫は手元にあるズマロン35mmF2.8を加えて、8枚玉ズミクロン35mmF2と、6枚玉ズミクロン35mmF2を並べてみました。ズマロンと第1世代8枚玉は鏡胴デザインが流用され一緒なのです。そして8枚玉が好きな人は、距離リングの指宛が無限遠位置にセットされるときに、パッチンという音がしてロックされるのがいいだというのです。また第2世代6枚玉のカナダライツ製は“ツノ”と呼ばれる絞りリングにレバーがついているのです。こちらの方は、ツノがあるから便利だということはあまり聞いたことがありませんが、それぞれの特徴ある部分をクローズアップしたのが≪写真2≫です。
撮影は≪写真3≫に示すように、手元にあるライカM9(CCD、1800万画素)、ソニーα7R II(CMOS、4240万画素)で行いました。ズミクロン35mmF2はライカの交換レンズだからライカの距離計連動機で行うのが本来とも考えられますが、最近はマウントアダプターを介してミラーレス一眼で使うことも多いし、レンズの性能をうんぬんするからには、高画素タイプで見る方がいいわけです。そして、それぞれにはライツ純正のフードと純正のフィルター(Leica UVa E39 13132)を取り付けて、実際の撮影に即した装備としました。以下実写を、8枚玉、6枚玉と同じ場面で比較した場合と、それぞれをランダムに撮影した場合をお見せして検討することにします。

≪写真2≫無限遠ストッパーの付いた8枚玉と6枚玉のツノ(画像をクリックすると大きく見られます)
≪写真3≫ライカM9(CCD、1800万画素)とソニーα7R II(CMOS、4240万画素)(画像をクリックすると大きく見られます)
≪写真4≫左:8枚玉、右:6枚玉。正面から見ると差はないのですが(画像をクリックすると大きく見られます)
≪作例01A、8枚玉:英国大使館≫α7R II:絞りF5.6・1/500秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
≪作例01B、6枚玉:英国大使館≫α7R II:絞りF5.6・1/640秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
●同じ場面を8枚玉と6枚玉で撮る
■英国大使館正面玄関

いつもの英国大使館正面玄関。ほとんどのレンズ評価の最初は、僕の場合この英国大使館の正面玄関を撮影することから始まるのです。撮影条件は、晴天の日の朝10:15~10:30ぐらいの間に、絞りF5.6でAE撮影、ピントは屋根の上部中央のエンブレムに合わせてあります。撮影は三脚使用で、ソニーα7R IIです。カメラポジションは三脚を使って目高位置にてわずかに仰角をもたせてアングルを決めています。ここはライカMマウントレンズだからライカM系のボディだけでやるのが本来かもしれませんが、ピント合わせは、距離計連動機ではこのような場所での焦点合わせは、ライブビューができ、しかも測距点の移動できるライカM10しかできません。またレンズの解像力を上回る撮像素子のボディで撮影しないとレンズの微妙なところはいえませんので、4,240万画素のソニーα7R IIを使ったのです。
それでは、実際に写された各シーン5ショットずつのうちベストと考えられるコマの画像からそれぞれの描写を見てみましょう。まず画素等倍に拡大して、屋根の上部中央のエンブレムを見てみると、8枚玉、6枚玉共に解像感は大きく相違はありません。ところが、6枚玉の画面最周辺の建物屋根部分をよく見ると、左右ともわずかに崩れているのです。これは、さらに絞り込むと解消するかもしれませんが、フィルム時代には周辺までプリントするフォコマートなら撮影の被写体と拡大率によっては目につきますが、スライドのマウントにセットすれば隠れてしまうというレベルです。
≪作例01A、8枚玉:英国大使館≫α7R II:絞りF5.6・1/500秒、ISO100、AWB
≪作例01B、6枚玉:英国大使館≫α7R II:絞りF5.6・1/640秒、ISO100、AWB
撮影のデータを書き出してみましたが、6枚玉はシャッター速度が同じ絞りF5.6でも1/3段ほど早いのです。つまり透過光量が6枚玉の方が高いのです。これは単純に6枚と8枚の差が出てきたものなのでしょうか。この2本のレンズは、正面から透かして見ると同じようにクリアに見えるのですが、斜めから後玉を見ると8枚玉が白くベールをかぶったように見えるのです≪写真4≫。これは単純に6枚玉の方がコーティングの性能が上がったのか、それとも硝材の屈折率が異なるからかなど考えられますが、正確にはわかりません。(東京・千代田区、2018.7)

≪作例02A、8枚玉:世界のガラス館≫α7R II:絞りF8・1/125秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
≪作例02B、6枚玉:世界のガラス館≫α7R II:絞りF8・1/160秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■ほぼ無限遠距離で画面の均一性を見る

英国大使館の撮影は、カメラから約20mの所にある建物がターゲットでしたが、さらにF8に絞り込んで無限遠に近い所にある平面の被写体の場合にはどうだろうかと撮影した結果が≪作例2Aと2B≫です。この場面では、画面中央の部分の解像特性を知るために、あえて地面を多く取り入れ水平・垂直がでるようにして撮影しました。
≪作例02A、8枚玉:世界のガラス館≫α7R II:絞りF8・1/125秒、ISO100、AWB
≪作例02B、6枚玉:世界のガラス館≫α7R II:絞りF8・1/160秒、ISO100、AWB
結果からすると、6枚玉の周辺の画質低下はほとんど解消されました、6枚玉の方が絞りの効きが遅いようです。ただ6枚玉は、画面中央部のシャープさではわずかに勝っているようです。画像の平坦性を狙って6枚玉をさらに絞り込むと、回折現象との兼ね合いになるので、F8ぐらいが適切な絞り値といえそうです。(福島県猪苗代町、2018.7)

≪作例03A、8枚玉:北大にて≫α7R II:絞りF8・1/200秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
≪作例03B、6枚玉:北大にて≫α7R II:絞りF8・1/200秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■中距離で画面の均質性を見る

さらに撮影距離15mぐらいの所での壁面を狙ってみました。実は最初の英国大使館の場面では、エンブレムを上部に入れるためにカメラを上に少し向けていたのです。ガラスの館では水平・垂直をだしての撮影でした。ここでは手持ちでしたが、同じように建物に水平を合わせて撮りました。
≪作例03A、8枚玉:北大にて≫α7R II:絞りF8・1/200秒、ISO100、AWB
≪作例03B、6枚玉:北大にて≫α7R II:絞りF8・1/200秒、ISO100、AWB
結果としては、画面上端の左右隅は、8枚玉、6枚玉ともかなり崩れたままです。結局、レンズの性質を知ったうえで、作画するのがベターということなのでしょうが、被写体、絞り値、撮影距離でずいぶん違うのです。画面中央部はやはりわずかながら6枚玉の方がシャープです。(2018.7)

2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

≪作例04A、8枚玉:西洋サワラの芽≫α7R II:絞りF2・1/1600秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
≪作例04B、6枚玉:西洋サワラの芽≫α7R II:絞りF2・1/1600秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■絞りF2開放で、最短撮影距離の解像

デジタルになってわかったことですが、良いレンズは、絞り開放で、最短撮影距離での画面中心はかなり高解像だということで、試してみたのがこのカットです。三脚を使って、レンズを最短撮影距離の70cmにセットしての撮影です。多少のずれは、奥行きのある被写体がカバーしてくれます。
≪作例04A、8枚玉:西洋サワラの芽≫α7R II:絞りF2・1/1600秒、ISO100、AWB
≪作例04B、6枚玉:西洋サワラの芽≫α7R II:絞りF2・1/1600秒、ISO100、AWB
描写としては、画面中心部ですから6枚玉がやはり高解像ですが、8枚玉との差はわずかです。また、アウトフォーカス部のボケは右上の木の葉の間に見える口径食は、6枚玉の方は輪郭がしっかりと見えますが、コントラストがわずかに高いようです。しかし、どちらも大きな差はないと見て問題ないでしょう。(東京・東村山、2018.7)

≪作例05A、8枚玉:赤い着物≫α7R II:絞りF2.8・1/60秒、ISO5000、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
≪作例05B、6枚玉:赤い着物≫M9:絞りF2.8・1/15秒、ISO800、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■ソニーα7R IIとライカM9で比較

≪作例05A、8枚玉:赤い着物≫α7R II:絞りF2.8・1/60秒、ISO5000、AWB
≪作例05B、6枚玉:赤い着物≫M9:絞りF2.8・1/15秒、ISO800、AWB
このカットは、8枚と6枚との比較というより、CMOSとCCDの比較という感じになりました。もともとCCDとCMOSでは発色が違うというような見方をされている部分もありますが、ここではむしろ露出レベルの違いが大きかったというのが現実です。どちらも、発色はスタンダードで、ホワイトバランスはオートです。結果としてソニーはJpeg出しっぱなし、ライカはDNGで露出レベルだけをそろえました。発色は、ソニーが渋く、ライカの方が鮮やかですが、右端の壁のシャドー部の発色など違いはありますが、どちらがどうということではなく、むしろメーカー間の色づくりの違いというレベルでとらえたほうがいいのでしょう。解像感はそれぞれの画素数が違うので画素等倍で比較はできませんが、同じぐらいに拡大すると、やはりほぼ同じという感じです。(福島・二本松市、2018.7)

≪作例06、8枚玉:しめ縄≫α7R II:絞りF2.8・1/100秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
●8枚玉、6枚玉でランダムに撮る
■岳温泉の裏通りで見つけた小さな祠の大きなしめ縄

≪作例06、8枚玉:しめ縄≫α7R II:絞りF2.8・1/100秒、ISO100、AWB
こういう被写体はどこにピントを合わせるかは迷いどころです。あれこれピントを前後させた後に決めたのが、しめ縄中央上部の細い縄の結び目でした。絞りがF2.8とあまり絞っていないので、大きく拡大すると、手前太いしめ縄の手前の部分のボケが必要以上に目立ってしまうことになりました。それでもピントの合った上部の縄の結び目は十分にシャープで、背景のアウトフォーカス部のボケ具合はまったく乱れはありません。(福島・二本松市、2018.7)

≪作例07、8枚玉:成駒食堂≫α7R II:絞りF5.6・1/125秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■岳温泉の食堂

≪作例07、8枚玉:成駒食堂≫α7R II:絞りF5.6・1/125秒、ISO100、AWB
岳温泉の「成駒食堂」。看板商品は70年もの歴史をもつソースカツ丼です。ソースカツ丼のように各地でご当地ものとしている食べ物はないのでしょう。発祥は、東京の早稲田大学近くの洋食店だそうで、大正時代に始まったというのです。そして今や、福島、長野、群馬、福井など、それぞれが「ソースカツ丼」をご当地グルメとして有名です。私は薄く切ってコンガリと揚がったカツが複数枚乗った秩父のわらじカツ丼が好きです。画質的には全体的に柔らかな描写ですが、拡大すると、しっかり解像しているのがわかります。(福島・二本松市、2018.7)

≪作例08、8枚玉:古川講堂≫α7R II:絞りF5.6・1/800秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■北海道大学キャンパスの木造講堂

≪作例08、8枚玉:古川講堂≫α7R II:絞りF5.6・1/800秒、ISO100、AWB
7月の北大キヤンパス内での撮影。この時期の北海道は、青空でからっとしていて、実にすがすがしい天候です。正門から入って、インフォメーションセンターで地図をもらい、ぶらぶら歩いて最初に見つけたのが木造の古川講堂でした。青空と屋根の薄緑、壁面の少し濁ったペイントのコントラストが良いので、狙った1枚ですが、細部まで解像した中にも柔らかさを感じる描写です。もう1絞り絞っても良かったかもしれません。(2018.7)

≪作例09、8枚玉:ナマケグマのはく製≫α7R II:絞りF2・1/60秒、ISO2500、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■北海道大学総合博物館にて

≪作例09、8枚玉:ナマケグマのはく製≫α7R II:絞りF2・1/60秒、ISO2500、AWB
絞り開放のF2で、ナマケグマの鼻先にピントを合わせました。α7R IIが4240万画素ということなので、F2開放時のレンズ解像力よりカメラの解像力の方が勝っているのは、さまざまな要因を考慮すると致し方ないことです。画素数的にはA3ノビ程度に伸ばすなら、全体に柔らかではありますが問題ない描写と考えます。(2018.7)

≪作例10、8枚玉:商店の玄関≫α7R II:絞りF2.8・1/60秒、+0.7EV、ISO2500、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■北海道開拓の村にて

≪作例10、8枚玉:商店の玄関≫α7R II:絞りF2.8・1/60秒、+0.7EV、ISO2500、AWB
JR札幌駅から1駅の新札幌からバスで15分ぐらいの所に「北海道開拓の村」があります。ここは明治から昭和初期にかけて建築された北海道各地にあった52棟の建物を54.2haの敷地に移築復元・再現した野外博物館で、そのなかの1棟の商店の店先です。
描写としては、やはり柔らかですが、全体的にわずかにフレアがかった印象を受けるのは、プラスの露出補正をかけたせいでしょう。直線の柱や梁が交差した画面ですが、歪曲は感じさせなく単焦点ならではの気持ちの良い描写です。(2018.7)

≪作例11、8枚玉:ししおどし≫M9:絞りF2・1/125秒、ISO160、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■温泉旅館の玄関にて

≪作例11、8枚玉:ししおどし≫M9:絞りF2・1/125秒、ISO160、AWB
やっとライカレンズにライカボディです。ししおどしに水(実は温泉水)が落ちる口にピントを合わせましたが、1800万画素でも撮像板の解像力の方が勝っています。それというのも1958年の時代のフィルムの解像力、プリントによる拡大は6切か4切ぐらいというわけで、鑑賞距離にもよりますが、まったく要求される解像力の基準が異なるのです。とはいっても、背景のアウトフォーカス画像のボケ具合は乱れることなく大変均質なのは素晴らしく。発色もM9はCCDですが純度の高い色を示しています。やはりこのあたりは画像処理の考え方によるのでしょう。(新潟・南魚沼市、2018.8)

≪作例12、6枚玉:機織り機≫α7R II:絞りF2.8・1/60秒、ISO800、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■機織り機

≪作例12、6枚玉:機織り機≫α7R II:絞りF2.8・1/60秒、ISO800、AWB
機織り機の櫛の所にピントを合わせてありますが、α7R IIの4,240万画素の画素等倍拡大で糸の部分を見ても必要十分な解像特性だと考えます。この場面でも、周辺の木枠は歪曲を感じさせない単焦点らしい素直な描写を示しています。(福島県二本松市、2018.7)

≪作例13、6枚玉:暖簾≫α7R II:絞りF2.8・1/250秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■酒樽と暖簾

≪作例13、6枚玉:暖簾≫α7R II:絞りF2.8・1/250秒、ISO100、AWB
被写体に正対できる位置から右側の暖簾にピントを合わせました。このようなシーンで、レンジファインダー式のM9でピントを合わせるのは難しいですが、ファインダーの自在な部分でピントを拡大して合わせられるのはミラーレス機ならではのことです。その結果、暖簾の縁を縫ったミシン目までしっかり解像していますが、酒類醸造業と白抜きされた文字は、拡大していくと文字と青地の縁にフリンジににじみが発生しているのがわかります。これは白など高輝度な被写体の明確な輪郭などに表れる現象で、レンズ性能というよりは、撮像素子ならではの描写特性といえるのでしょう。中央の酒樽のボケ描写もクセは感じさせません。(福島県二本松市、2018.7)

≪作例14、6枚玉:クマのはく製≫α7R II:絞りF2・1/60秒、ISO3200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■北海道大学総合博物館にて

≪作例14、6枚玉:クマのはく製≫α7R II:絞りF2・1/60秒、ISO3200、AWB
8枚玉とは異なるクマのはく製です。どちらも絞り開放で鼻先にピントを合わせてありますが、画素等倍まで拡大して見ると、こちらの6枚玉の方がしっかりと像を結んでいます。開放絞りで、画面中心と、周辺近くでの画質の違いでしょうか、もちろん三脚は使っていないので、ブレの要素などもあるかもしれません。(2018.7)

≪作例15、6枚玉:松の木≫α7R II:絞りF8・1/250秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■北海道大学構内にて

≪作例15、6枚玉:松の木≫α7R II:絞りF8・1/250秒、ISO100、AWB
松の葉を写すとしっかりと1本ずつ葉が見えるかどうかで、レンズの解像力が高いかどうかよくわかります。このレンズはしっかりとF8に絞ったこともあり、十分に解像力が高いことはうかがい知れます。青空の下に建物の壁面との関係でどうだろうかと思いましたが、ピントを合わせた松葉と建物の壁はしっかりと解像していますが、斜めに位置する右端の壁と樹木の葉は深度内に入らなかったので、ボケています。(2018.7)

≪作例16、6枚玉:ランニングする人≫α7R II:絞りF8・1/250秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■北海道大学構内にて

≪作例16、6枚玉:ランニングする人≫α7R II:絞りF8・1/250秒、ISO100、AWB
芝目を撮影すると、意外とムラができそのレンズの特性がわかるのです。たまたま日の当たった芝生と、日陰のコントラストがおもしろかったので狙っていたら、後方にランニングする人が見えましたので、シャッターを切りました。ピントは白い小さな花が咲いている所の少し先ですが、画面全体に均質性が高く、狙ったところは十分に解像しています。(2018.7)

≪作例17、6枚玉:黒塀のコントラスト≫M9:絞りF5.6・1/90秒、ISO1000、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
■温泉旅館の玄関にて

≪作例17、6枚玉:黒塀のコントラスト≫M9:絞りF5.6・1/90秒、ISO1000、AWB
M9での撮影です。真っ黒な板の塀でしたが、露出は補正なしのそのままでうまい具合に描写されました。ツタのような植物と黒塀のコントラストがおもしろかったので、シャッターを切りましたが、ある程度拡大してみると、木の地肌の電動カンナの目、節などが細かく描写されているのがいいです。画面中央部の木の地肌が、丸く円を描いたように見えるのは、周辺と中心の光量差でしょうか? それともペンキがちょうどその部分が薄かったのでしょうか。撮影しているときには気づかないでした。(新潟・南魚沼市、2018.8)

●8枚玉か6枚玉か

そもそも50年も前のレンズで、デジタルカメラにどちらがいいかというのも変な話です。ただ、フィルム写真の末期のクラシックライカレンズの最盛期には、そのようなことがまじめに議論されていたのです。そしてデジタルの時代に改めて見直したのが今回のレポートですが、かつてさまざまなレンズを評価した中ではきわめて類似性をもった描写でした。あえて言うならば、第1世代8枚玉は画像平坦性がよく、6枚玉は中心解像性能が高いということでした。また6枚玉の方が透過率は高いというのも、デジタルの時代にあってはさほど影響はないと考えられ、もし黒白フィルムで使うと8枚玉の方が描写として柔らかな描写を示すと考えられます。とはいっても、高画素化したデジタルカメラでは、レンズの解像力より撮像素子の解像の方が高いわけですが、実際はプリントしても、プリンターの解像度、さらには鑑賞距離によっても異なるのです。いずれにしても同じライカのレンズであるわけですから、描写特性はかなり近似していても当然なわけです。 (^_-)-☆ (201809)