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ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)

第四十二回「シグマsdクワトロHを使ってみました」

コーナー名
ライカに始まりライカに終わる
著者
市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)
対象機材・テーマ
シグマsdクワトロHを使ってみました
概要・導入
シグマのミラーレス一眼APS-C判「シグマsdクワトロ」が発売されたのは2016年7月、そしてAPS-H判「シグマsdクワトロH」が発売されたのが2016年12月、さらにこのレポートができ上がったのが2017年の6月というわけで、半年遅れの報告となりました。 sdクワトロHは、外観としてはHの表記以外sdクワトロとまったく同じ【写真1】で、そもそもAPS-C判とAPS-H判の違いは、いまさらではありませんが、撮像素子の面積の違いからくるのです。その結果、APS-C判のsdクワトロでは35mm判に換算すると1.5倍の倍率がかかり5424×3616ピクセルの画像が撮影でき、APS-H判は1.3倍の…

1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

【写真1】sdクワトロとsdクワトロHボディは、センサーの大きさが異なり、外観から見ると名称の所にHが加わっただけのようです。この写真で違うように見えたら撮影の問題ですのでご了解を。(以下、画像をクリックすると大きくして見ることができます)
【写真2】sdクワトロHにArt35mmF1.4DGを装着し、Art24mmF1.4DGを右横に配置しました。
【写真3】Art85mmF1.4DGを装着したクワトロHとAPS-C用のArt18-35mmF1.8DC。どちらも存在感たっぷりの重量級です。
■シグマsdクワトロH

シグマのミラーレス一眼APS-C判「シグマsdクワトロ」が発売されたのは2016年7月、そしてAPS-H判「シグマsdクワトロH」が発売されたのが2016年12月、さらにこのレポートができ上がったのが2017年の6月というわけで、半年遅れの報告となりました。
sdクワトロHは、外観としてはHの表記以外sdクワトロとまったく同じ【写真1】で、そもそもAPS-C判とAPS-H判の違いは、いまさらではありませんが、撮像素子の面積の違いからくるのです。その結果、APS-C判のsdクワトロでは35mm判に換算すると1.5倍の倍率がかかり5424×3616ピクセルの画像が撮影でき、APS-H判は1.3倍の倍率がかかり6192×4128ピクセルの画像が撮影できます。使用にあたっては、APS-C用にはDCタイプ(APS用)レンズを使い、APS-H用にはフルサイズ用の交換レンズが用意されています。
シグマでは、これらの違いを含めてsdクワトロは3,900万画素相当、sdクワトロHでは5,100万画素相当の高画質が得られるというのです。なぜ出力ピクセル以上の相当という高画質が得られるのかというのは単純な疑問ですが、簡単にいうと4ピクセルのセンサーからRGB信号を導き出すバイヤー方式のカラーセンサーと、1ピクセルの単一センサーからRGB信号を導き出すフォビオンセンサーでは解像感が違うというわけです。
このあたりは何倍いいのかという話になり、過去に多くの人により計算で導き出されていますが、単純に3倍いいということでなく、過去に僕が計算したらほぼ2倍の解像感が得られるのです。これは、かつて画質というと撮像素子のピクセル数で決まるという感じがありましたが、実際は、このように撮像方式によっても変わり、光学RAWパスフィルターのあるなし、レンズの解像力も加味されて、画質は決まるわけでして、さらにプリントするときの拡大率にも大きく依存するのです。
実際どのくらい違うのかとは、いくら計算や文章で表現しても難しく、このシリーズでシグマのフォビオンセンサーを取り上げた部分と他機種の高画素機との違いを見てもらえばわかります。

■実際に写してみると

そこで撮像素子の原理的な違いをいうよりも、実際写してみたらどうでしょう。「百聞は 一見にしかず」というわけです。今回は、じっくりと長期にわたり使用しましたので、真冬から初夏までと作例もさまざまです。使用したレンズも、シグマ純正で、フルサイズ用のArt35mmF1.4DG、Art24mmF1.4DG【写真2】、Art85mmF1.4DGの3本に加え、APS-C用のArt18-35mmF1.8DC【写真3】の4本を使いました。

■Art35mmF1.4DGの場合

シグマsdクワトロHボディにセットレンズとして発売されているのが、Art35mmF1.4DGです。クワトロHはAPS-Hですので、1.3×をかけて45.5mm相当画角となるので、これが標準レンズというわけです。以下、まずはArt35mmF1.4DGの場合を紹介しましょう。

【作例01】いつもの英国大使館正面玄関 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用
●いつもの英国大使館正面玄関【作例01】

毎度おなじみの英国大使館です。季節は変わっても、とりあえず晴天の青空のもと、午前10時20分頃に定点撮影的に撮影するというのが、僕が決めたルールです。このほか、焦点距離は35mmあたりを基準に、絞りはF5.6に設定して、三脚使用、ピントは建物屋根中央下のエンブレムに合わせてと、決めていますので、カメラ、画素数、レンズが変わってもその部分、さらには各部を見れば、だいたいの画質はつかめます。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/01/28)
さていかがでしょう。ここで見ていただきたいのはsdクワトロHに加え、本シリーズバックナンバーAPS-C判のsdクワトロの同じ英国大使館カットです。どちらも驚くほど微細に解像していますが、パソコン画面の画素等倍に拡大して見たときの大きさの違いが、sdクワトロHとsdクワトロの画素数の違いなのです。さらに比較してみるなら、ニコンD810(3,640万画素)、ソニーα7Mark II(4,240万画素)、キヤノンEOS 5Ds(5,060万画素)、ペンタックスK-1(3,640万画素)などの他社高画素機と比較してみてください。もちろんこれらの違いには、レンズ性能を含んだうえであることです。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例02】寒椿と梅 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F1.4・1/50秒、ISO125、AWB、三脚使用
●寒椿と梅【作例02】

シグマArtラインのボケ味は最近評判がいいのです。そこで、35mmF1.4の絞り開放の描写はどんなものかと、旅館の次の間に生けてあった寒椿の花の雌しべにピント合わせて狙ってみました。(茨木県袋田)
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F1.4・1/50秒、ISO125、AWB、三脚使用(撮影:2017/03/05)
もちろん、狙った雌しべは花粉までしっかりと見えるほどシャープで、ピント面と同一平面上にある椿の葉の光沢感と解像感はなかなかですが、ここでしっかりと見ていただきたいのは、背景のボケ具合で、赤い花びらの直後の椿と梅の花のボケ具合、さらには左奥上の額縁のボケ具合とも、ムラのない自然なボケ味が再現されています。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例03】まるで鉄牛のようですが <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影
●まるで鉄牛のようですが【作例03】

埼玉県小鹿野町に埼玉県山西省友好記念館「神怡館(しんいかん)」というのがあります。隣に温泉があるので、ときどき訪れますが、秩父の山奥に突如として現れる異国ムードあふれる中国式寺院建築の赤茶色の屋根と青空のコントラストが映える場所です。このお寺の入り口に大きな鉄製のような牛の像があります。そこをわきから狙ってクローズアップ。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/12)
絞りF5とある程度絞り込まれていますが、近接した撮影であるために、35mmという焦点距離ですが、背景は適度にボケて撮影できました。このボケ具合も、素直な描写です。実は、この牛の像を長いあいだ鉄の鋳物だと思っていたのですが、近づいてみてみたら少し欠けていて、そこをよく見たら樹脂製のレプリカなのでした。ずいぶん長い間だまされていましたが、それにしても複製技術のうまさに感心しました。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例04】「神怡館」入口の天井画 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F2.8・1/200秒、ISO100、AWB、手持ち撮影
●「神怡館」入口の天井画【作例04】

神怡館入口の天井を見たら、繊細な筆と色づかいの天井画が描かれていました。早速、撮影してみました。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F2.8・1/200秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/12)
大きく拡大して見ても、周辺までまったく画に崩れがなくきれいに微細な部分まで見えます。屋外の天井という、ムラない照明がマッチしたのでしょうか、画とカメラの画質がうまく組み合わさった好例だと思うのです。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例05】秩父農村神楽 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F4・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影
●秩父農村神楽【作例05】

埼玉県秩父市の神明社に安政年間から伝わるという農村神楽。このときの演題は「蛇打座」で、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治して、イナダヒメノカミと結ばれるという神話をもとにした、お神楽でした。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F4・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/12)
このシーンは前の天井画とはまったくライティングの関係は逆で、輝度比が高く、カメラにとっては最も苦手なシーンとなっています。舞台中央に立つイナダヒメノカミの演者を描出すると、手前の舞台手すりと奉納金の書かれた紙は露出オーバーで白く飛び気味となります。本来なら、アンダー気味に撮影して、部分的に中央の演者を明るくするという、レタッチテクニックを使えばよいのでしょうが、ここではカメラの性格を知るという意味から、撮影したそのままのデータを載せてあります。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例06】ポートレイト・1 <br> <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F2.8・1/200秒、ISO100、+0.7EV補正、AWB、手持ち撮影
●ポートレイト【作例06】

レンズとカメラの性能(性格)を知るのにはポートレイト撮影が一番だと僕はいつも考えています。撮影距離にもよりますが、髪の毛やまつ毛の分離具合を見て解像力を、肌の描写を見て階調特性や発色傾向がわかるのです。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F2.8・1/200秒、ISO100、+0.7EV補正、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/05/20)
モデルさんには失礼ですが、向かって左の目のあたりをクリックして画素等倍まで拡大して見てください。いかにシャープかよくわかるでしょう。このような撮影は、本来はポートレイトモードにするのがよいのでしょう。ポートレイトモードの場合にはわずかに描写は柔らかく、若干赤みが増すようですが、その差は微妙で好みの範囲の違いです。(モデル:ひぐれ ともみさん、日比谷公園)

【作例07】高い解像感を知る・1 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F6.3・1/700秒、ISO100、-0.7EV露出補正、AWB、手持ち撮影
●高い解像感を知る・1【作例07】

長野県千曲市にある荒砥城址より市内を俯瞰し写してみました。天候に恵まれて青空であったのですが、距離があるので、うっすらとカスミがかかっているような感じがします。画面全体で見ると、それほど高解像であることを感じませんが、それはモニターの解像度であり、画素等倍まで拡大すると、川の手前と奥の家並みの1軒1軒がしっかりと解像しているのに驚きます。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F6.3・1/700秒、ISO100、-0.7EV露出補正、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/29)
解像度の高さは、さまざまなシーンで実感することができますが、このようなシーンでの細密描写には、ただただ驚くばかりです。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例08】高い解像感を知る・2 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5.6・1/800秒、ISO100、-0.7EV露出補正、AWB、手持ち撮影
●高い解像感を知る・2【作例08】

前作例と同じ荒砥城址での撮影ですが、こちらは天守閣跡地の木製の柵にピントを合わせてみました。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5.6・1/800秒、ISO100、-0.7EV露出補正、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/29) 撮影結果からすると、木の柵は日差しのよい場所でつねに乾燥したような状態で立っているのですが、拡大して見ると木材の乾いた感じがよくわかります。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

【作例09】高い解像感を知る・3 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F7.1・1/1000秒、ISO100、-1EV露出補正、AWB、手持ち撮影
●高い解像感を知る・3【作例09】

フィルムカメラを使っている時代から、レンズの解像力を知るのに最も簡単にわかり、適切なのは、冬に落葉したケヤキの木の枝を画面に写し込み、中心・周辺と拡大して見ることにより、その解像力を知ることができたのです。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F7.1・1/1000秒、ISO100、-1EV露出補正、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/04/13、長野県蓼科)
デジタルカメラになると、レンズの解像力だけでなく、カメラの撮像素子の性能や画素数がもろに効いてくるようになりました。簡単にいうと、解像的にレンズが勝つか、センサーが勝つかということになりますが、その両方のバランスにより最終的に得られる画像の解像度が決まるのです。このカットでは、まだ葉のつく前の木々の枝の細かさと、距離があることによりかなり微細なテストチャートとなりました。拡大してご覧になることにより、その細かな描写をお分かりいただけると思います。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例10】花筏 <レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5.6・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影
●花筏【作例10】

サクラの花の咲く時期になると、昔ながらの通り沿いに用水路の流れる群馬県の甘楽町小幡に雰囲気がいいので、僕はいままで何度も訪れています。
<レンズ>シグマArt35mmF1.4DG(35mm判45mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5.6・1/400秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/04/13、群馬県甘楽町小幡)
特に意図することではありませんが、用水路に散ったサクラの花がきれいだったのでシャッターを押しました。透明度の高い水に散った花びらは、水流に身を任せわずかながら動いています。露出は、花びらの質感をだすようにマイナス補正かなと考えましたが、補正なしの±0でちょうどよかったのです。フォビオンセンサーは登場した当初から、サクラの花が良く写るといわれていました。これは単純に発色がピンク色に偏ったということではなく、1つの花や1枚の花びらの色再現において、同じピンクの花びらでも色は微妙に異なるので、1ピクセルのセンサーからRGB信号を導き出すフォビオンセンサーではその細かな色の差を描出しやすい、というように解釈しています。もちろん、レンズの解像力、露出の与え方、色再現の設定や撮影距離、拡大率などすべてに依存するわけですから、簡単には言い切れません。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

■Art24mmF1.4DGの場合
【作例11】札幌時計台 <レンズ>シグマArt24mmF1.4DG(35mm判34mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5.6・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影
●札幌時計台【作例11】

建物の陰には雪が残る札幌時計台です。実はクワトロHは2回札幌に連れて行きました。1回目は1月の下旬、その時は雪が時計台の屋根、庭、道路をすっぽりと覆っていたのです。撮影は、いつも決めているのは道路を隔て時計台向かいにある、トニーローマのあるビルの2階テラスからです。その時に持参したレンズは、Art35mmF1.4DGだったのです。もちろん描写を見るだけならまったく問題ないのですが、画角的に45mm相当画角では、時計台の頭がカットされてしまうのです。そこで再挑戦で、4月の上旬にArt24mmF1.4DGを持参しての撮影でした。
<レンズ>シグマArt24mmF1.4DG(35mm判34mm相当画角)<撮影データ>プログラムAE_F5.6・1/500秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/04/10)
結果はご覧の通りで、時計台はすべて写し込めています。地上レベルから撮ると、上を見上げるようになるので上すぼまりの写真になりますが、道路を挟んだ対岸のビルの2階テラスからですと、観光客の混雑もなくレベルがでた写真が撮れるのです。
描写は、35mm同様に24mmもなかなかで、木造の時計台の質感、左右の落葉した樹木の枝の細かいところの鮮鋭度はまさにフォビオンセンサーならではの描写であり、24mmF1.4DGレンズの高解像も大いに発揮されたカットです。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例12】札幌駅南口前広場の像 <レンズ>シグマArt24mmF1.4DG(35mm判34mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/4000秒、ISO100、AWB、手持ち撮影
●札幌駅南口前広場の像【作例12】

24mmレンズの前ボケと後ボケの具合を見てみようと札幌駅南口広場にある「牧歌の像」をねらってみました。子羊を抱いた男性、ポプラ・トウモロコシ・スズランを持った3人の女性のアップですが、少し左に離れたところに角笛を吹く男性の像があります。ピントは右から2人目の、スズランをもつ女性のスズランのあたりに合わせてあります。
<レンズ>シグマArt24mmF1.4DG(35mm判34mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/4000秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/04/10)
前ボケ・後ボケの具合を見るということで、あえて絞りF2と開放近くにしました。像の質感描写は拡大すればごく当たり前の感じの微細な描写ですが、露出的にはもう少しアンダーに設定したほうが重厚感はでたのだろうと考えました。わずかに気になるのは、左側女性の上背後に写っている、アウトフォーカスした小枝の部分で、画素等倍にしてみると、色収差の影響からでしょうか、背景が青空の場合には、わずかに赤みがかって見え、背景が白いビルの壁面だと緑味がかって見えることです。これは、フォビオンに限らないデジタルカメラの撮像素子ならではの現象で、画素等倍など必要以上に拡大して見えることであり、【作例11】時計台の写真では小枝を画素等倍を超えて観察して見てもそのようなことはありませんでしたので、デジタルならではの結果だろうとも思うのです。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

■シグマArt85mmF1.4DG
【作例13】ポートレイト・2 <br><レンズ>シグマArt135mmF1.4DG(35mm判110mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/100秒、ポートレイトモード、ISO125、AWB、手持ち撮影
●ポートレイト・2【作例13】

いまシグマのレンズで最も話題の交換レンズです【写真3】。その焦点距離からわかるように、ポートレイト用のレンズなのですが、2016年フォトキナで発表され、ずばりカールツァイスのOtus85mmF1.4をコンペチターとして、性能はほぼ同等、価格は半額以下と公言して登場した話題のレンズです。発売以来プロ写真家に人気のようで、今回はシグマSAマウントが入荷するのを待ってレポートの仕上げとなりました。
<レンズ>シグマArt85mmF1.4DG(35mm判110mm相当画角)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/100秒、ポートレイトモード、ISO125、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/06/24、千代田区半蔵門にて)
結果はご覧の通りです。画角は35mm判焦点距離110mm相当となりますが、ここではあえて絞りは開放でなく、実用的にということでちょい絞ったF2としました。これは作戦としては失敗で、夕方なのでシャッター速度が1/100秒となり手ブレ発生の原因となりました。それでも、何とか納得の1枚をセレクトしたのです。このレンズの特徴は、ピントが合ったところでのシャープな描写と、浅い深度でアウトフォーカス部の柔らかな描写にあるであるわけですが、この1枚からでもお分かりいただけるでしょう。撮影は、ポートレイトモードなので少し柔らかく描写されています。最近、身近なプロの何人かこのレンズを使用しているのを知っていますが、満足度はかなり高いようです。(モデル:ひぐれ ともみさん)(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【写真3】Art85mmF1.4DGを装着したクワトロHとAPS-C用のArt18-35mmF1.8DC。どちらも存在感たっぷりの重量級です。
●シグマArt18~35mmF1.8DC【写真3】

このレンズをAPS-C判のsdクワトロ用に使用すると、27~52mm相当画角となるズーム全域開放絞りF1.8のレンズです。このレンズをsdクワトロHで使用すると、自動的にクロップされ、APS-C判での撮影となるのです。つまりsdクワトロで撮影したのと同じになってしまうのです。それでも、sdクワトロHに標準レンズ相当の35mmF1.4だけをもっての撮影では不安でしたので、広さを表現したいときには画角27mm相当のレンズは役に立つだろうと持参したのです。
広角のフルサイズ用交換レンズをあまり持たなかったのでAPS-C判でいいかなということですが、APS-H判のクワトロH6192×4128ピクセルの画像が、APS-C判だと5424×3616ピクセルの画像として撮影できるので。そこでsdクワトロのデータを200ppi(300ppi)でプリントすると長辺688mm(459mm)、sdクワトロHのデータを200ppi(300ppi)でプリントすると長辺方向で786mm(524mm)となります。これをプリントサイズに当てはめると、どちらもA3ノビは十分にカバーし、見方にもよりますがA2、A1判までカバーする画素数だということになるのです。ただこれは、数値的な解像度の問題だけであって、実際の解像感はフォビオンセンサーならではのものがあり、少なくとも一般センサーの2倍近い解像感ある画像が得られることになりますが、このあたりは言葉で言っても難しいので、実データにあたってください。

【作例14・A】茨木県・袋田の滝 <レンズ>シグマDC18~35mmF1.8Art(焦点距離18mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F4・1/125秒、ISO100、AWB、手持ち撮影

〇茨木県・袋田の滝【作例14・A】
滝の流れを止めようとか、白く糸の流れるようにとスローシャッターで切るなどのテクニックを用いなく、プログラムでそのままシャッターを押しました。決して高速ではありませんが、水しぶきもきれいに止まっていて、十分に大伸ばしに耐えられる画像です。
<レンズ>シグマDC18~35mmF1.8Art(焦点距離18mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F4・1/125秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/06)(画像は作例14・A、14・Bともクリックすれば画素等倍まで拡大できます)

【作例14・B】長野県・千曲市ふる里漫画館 <レンズ>シグマDC18~35mmF1.8Art(焦点距離35mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F6.3・1/630秒、-0.3EV露出補正、ISO100、AWB、手持ち撮影

〇長野県・千曲市ふる里漫画館【作例14・B】
白い壁と黒い屋根のコントさストが、青空の中に生えています。特にご覧いただきたいのが、建物の前に植わった松の葉です。一般的には松葉のように線の細いものはなかなか解像しませんが、ここでは1本1本がきれいに解像しています。カメラもレンズも解像度が高いわけで、屋根瓦の質感もいい感じです。
<レンズ>シグマDC18~35mmF1.8Art(焦点距離35mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F6.3・1/630秒、-0.3EV露出補正、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/30)
ところでArt18~35mmF1.8DCを使っていて面白いことに気づきました。sdクワトロHには、クロップモードというのがあり、APS-HとAPS-Cを切り替えることができるのです。デフォルトは、レンズがDCかDGを検出して自動に切り替えるオート設定なのですが、これをOFF・ONにする手動設定があるのです。そこでOFFモードにすると、18~35mmが、23.4~45.5mm相当画角の得られるレンズとして使用できるのです。これを調べてみるとフォビオンセンサーのイメージエリアがsdクワトロH(sdクワトロ)は26.7×17.9(23.4×15.5)mmなのです。その差は、長辺方向で3.3mm、短辺方向で2.4mmなのです。これを、光軸から測ると、長辺方向に1.65mm、短辺方向に1.2mmずつ広がったことになるのです。この寸法差が大きいか小さいかは、使ってみればわかることで、撮影場面によっては大変有効だと思うのです。
もちろんこのような使い方はシグマが推奨していないわけですから、何か画質的に問題はあると思うのですが、ざっと見た感じではワイド側の周辺に色収差が残っているような感じはありますが、最終画像の拡大率、モノクロで使用する、レタッチソフトで処理するなど、ユーザーの判断によってはかなり有効な画角です。逆に、フルサイズのDGレンズをマニュアルでAPS-Cモードに切り替えれば、35mmが45.5mmレンズ相当画角になるのです。このような使い方は、原理を理解すれば簡単なわけで、高画素・高画質センサーとレンズならではの使い方になるのです。

【写真4】M42レンズ(カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS)と「M42→シグマSA」マウントアダプター。
【写真5】左から、カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS、スーパータクマー55mmF1.8、タムロン200mmF5.9を装着したsdクワトロH
■指定外のレンズを使ってみたら

指定外のレンズとは?となりますが、ここでは2種類用意しました。1つは、前記のシグマSAマウントですがAPS-C判のレンズを、もう1つはマウントアダプターを使って他社のレンズを使おうということです。
まずシグマSA用には44mmというフランジバックの関係からマウントアダプターはM42用があります。かつてはシグマのSAマウントには、外爪と内爪式の2種があり、ニコンFマウント用アダプターがサードパーティーから発売されていたこともありましたが、現在では内爪式だけに統一されています。この「M42→シグマSA」マウントは加工が楽なせいか、中国製だと1,000円前後で購入できるのです。今回は、少し奮発して上位の1,800円(送料込み)というのを購入しました【写真4】。M42レンズは、手元にあるのを調べてみましたら、Granada35mmF2.8、SunTelePhotoZOOM180~410mmF5.6、Revunon24mmF4、Tamron200mmF5.9、SuperTakumar55mmF1.8、CarlZeiss Jena DDR MC Tessar50mmF2.8、CarlZeiss Planar50mmF1.4ZSなどなど、Tマウント普通絞り、プリセット絞り、完全自動絞りとさまざまあり、手元にあるレンズで高画質を手軽に楽しむという意味ではM42マウントレンズならではの歴史とバリエーションが魅力です。このうち3本を選んでみました【写真5】。

【作例15】タムロン200mmF5.9・ミズバショウ <レンズ>タムロン200mmF5.9(焦点距離35mmで撮影、画角:35mm判260mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F8・1/125秒、ISO100、AWB、三脚使用
●タムロン200mmF5.9・ミズバショウ【作例15】

僕が、高校生時代の1965年に、35mm一眼レフの交換レンズとして初めて求めた最初の望遠レンズです。マウントはTマウントという独自交換マウント式で、現在でも各社交換マウントとして発売されているので、このように50年以上前のレンズでも条件さえ合えば使うことができるのです。
<レンズ>タムロン200mmF5.9(画角:35mm判で260mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F8・1/125秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/04/04、武蔵村山市・野山北公園)
このレンズは、古いレンズでも楽しく遊べるということで、ここ数年の間にニコンD3やキヤノンEOS1Ds MarkIIなどで問題なく撮影できた実績があるものです。かつて高校生の時代に趣味のサボテンをクローズアップして楽しんでいたのを思い出し、近所の公園でミズバショウの花をアップで撮影してみました。結果はご覧の通り、開放絞りからわずかに1段絞り込んだF8での撮影ですが、ミズバショウの雌しべを画素等倍まで拡大して見ると、十分解像していることがわかります。これは貼合わせの色消しレンズ1枚とUVフィルターを組み合わせた2群3枚構成という大変シンプルな光学系であることから、解像力、色のヌケとも現代に通用したものだと思うのです。また焦点距離が200mmと長いことから、フォビオンクワトロセンサー受光面に対して光束が鉛直に入ってきているようなことが、良い結果をもたらしているだろうと考えます。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例16】カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS・カタクリ <レンズ>カールツァイス50mmF1.4ZS(画角:35mm判65mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/2000秒、ISO100、AWB、三脚使用
●カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS・カタクリ【作例16】

先ほどのタムロン200mmが古典派だとすると、こちらはさらにもっと新しいセミクラシック派となります。なぜタムロンとカールツァイスかということになりますが、このプラナーはコシナが製造したのです。現在世界を代表するレンズメーカーの交換レンズを、シグマの最新ミラーレス一眼に装着して撮影してみたいという遊び心の以外の何ものでもないのです。
<レンズ>カールツァイス50mmF1.4ZS(画角:35mm判65mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/2000秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/04/04、武蔵村山市・野山北公園)
ミズバショウの花と同じ公園内にカタクリの花が咲いているのです。プラナーのほうは50mmという焦点距離とF1.4という大口径を活かして、カタクリの群生へボケ具合を考慮してねらってみました。手前の花1輪にピントを合わせて、F2でシャッターを切ってみましたが、ピントを合わせた花びらはプラナーらしく柔らかな描写で、背景はうまい具合にボケ、玉状のボケが描出されました。プラナーという特性から、もっと絞り込むとよりシャープになるだろうと考えられます。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【写真6】GRANADA35mmF2.8を装着してsdクワトロHでの撮影風景
【作例17・A】GRANADA35mmF2.8・北山公園のサクラ <レンズ>GRANADA35mmF2.8(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)
【作例17・B】Art35mmF1.4DG・北山公園のサクラ <レンズ>Art35mmF1.4DG(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)
●GRANADA35mmF2.8【写真6】

1960年代に製造されたと考えられる輸出用M42の普通絞りレンズです。1970年代の初頭に日本橋室町のカメラ屋さんの店頭に1個500円で山積みになっていたのを購入したものです。特に使うあてもなく長年のわたり持っていましたが、2010年に発売されたSD10にマウントアダプターを使ったときには、まったく問題なく使えたのです。そこでsdクワトロHではどうだろうかと、屋外での撮影に使ってみました。
【作例17・A】 <レンズ>GRANADA35mmF2.8(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/04/16)
【作例17・B】 <レンズ>Art35mmF1.4DG(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用
当初は、GRANADAレンズ単独でレポートしようと思いましたが、画面左下の色かぶりなどにびっくりして、純正のシグマArt35mmF1.4DGと比較することにしました。2010年にSD10で使った時には違和感なく使えましたが、焦点距離は同じでも、レンズタイプ、コーティングなども当然違うのですが、たぶんイメージサイズがSD10(APS-C、×1.6)とsdクワトロH(APS-H、×1.3)では大きく違うこと、フォビオンクワトロセンサーが従来のフォビオンセンサーより高画素でシビアになったことなどが考えられます。撮影結果を見るとわかることですが、同じ焦点距離表示でも画角が違うことなどは無視し、さらに発色、周辺での色付きなどなどを除外しても、画面内の掲示板の文字、芽を吹いたばかりの木々の先を見ると、明らかにシグマArt35mmF1.4DGの方が高解像力であることがよくわかります。
結局、このように周辺にダメージのあるレンズでは、モノクロで使用したり、クロップモードでAPS-Cにして使うのも実用的には有効な方法です。そこでAPS-C 判のsdクワトロでは、ボディだけですと現在実勢価格8万円以下で求められるので、マウントアダプターとM42レンズを組み合わせれば、安価で高画質な画像が手軽に得られるカメラシステムなのです。

■終わりに

sdクワトロHのレポートは、その使用は過去に例がないほどの長期にわたりました。交換レンズも、やはり過去に例がないほどシグマ製で4本も使いました。そして今回はミラーレス機だからということで「M42→シグマSAマウントのアダプター」を使い、他社レンズでの撮影も試みましたが、難ありだったのはGRANADA35mmF2.8だけでしたが、このほかの他社レンズはほとんど問題なく使えたのです。結局、最新のフォビオンセンサーを使うカメラは、高画質と引き換えにかなりシビアなレンズ性能が要求されるのです。
最近シグマのArtラインなど交換レンズが高い評価がなされていますが、少なくともsdクワトロ、sdクワトロHカメラを満足させるためには、それなりの高い画質をもった交換レンズが必要とされるわけで、このフォビオンクワトロセンサーを満足させる交換レンズ作りが、結果として高画質を生み出すのではないだろうかと考えました。
そしてさらにいうならば、フォビオンクワトロセンサーのフルサイズ判を待つユーザーも一部に多いようですが、この先APS-Hからフルサイズへのステップアップは、フォビオンセンサーを満足させるフルサイズの交換レンズも同時に必要なわけで、この部分をクリアーできるレンズの登場が待たれるわけです。しかし、デジタルとフォビオンセンサーという特性を生かすと、現状でも必要十分に高画質なのです。
(2017/06/30)