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ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)

第四十一回「ペンタックスK-1を使ってみました」

コーナー名
ライカに始まりライカに終わる
著者
市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)
対象機材・テーマ
ペンタックスK-1を使ってみました
概要・導入
ペンタックスK-1は、フルサイズ機であると同時に3,640万の高画素機でもあるのです。この3,640万画素近似の高画素撮像素子を搭載した一眼レフとしては2012年に発売されたニコンD800、D800Eが最初です。この2機種は2014年には改良統合されD810へと引き継がれました。この間、一眼レフではありませんが2013年に発売されたミラーレスのソニーα7Rも同等の高画素撮像素子を使っていました。つまり、3,600万クラスフルサイズ機が登場して4年経過したのです。そしてペンタックスK-1が登場。この間、先行高画素機にはさまざまな技術進歩がありました。フルサイズであると同時に高画素機、そんな視点を…

1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

【写真1】ペンタックスK-1、HDペンタックス-D FA 28~105mmF3.5-5.6ED DC WRを装着(画像をクリックすると大きくして見られます)

ペンタックスK-1は、フルサイズ機であると同時に3,640万の高画素機でもあるのです。この3,640万画素近似の高画素撮像素子を搭載した一眼レフとしては2012年に発売されたニコンD800、D800Eが最初です。この2機種は2014年には改良統合されD810へと引き継がれました。この間、一眼レフではありませんが2013年に発売されたミラーレスのソニーα7Rも同等の高画素撮像素子を使っていました。つまり、3,600万クラスフルサイズ機が登場して4年経過したのです。そしてペンタックスK-1が登場。この間、先行高画素機にはさまざまな技術進歩がありました。フルサイズであると同時に高画素機、そんな視点をもって、ペンタックスK-1【写真1】を眺めてみました。
実は高画素機で最初のモデルが登場したとき、あくまでも僕自身の問題ですが、撮影に大変神経質になり、いつも頑丈な三脚を携えて撮影というわけで、一眼レフ本来の軽快さとは裏腹に、1枚ずつ同じシーンで複数回シャッターを切ったり、ミラーアップしてレリーズ撮影というようなことをしていました。
そして2年後に発売された、高画素機ニコンD810とキヤノンEOS5Ds/EOS5DsRでは、一眼レフならではのミラーショックを軽減することを目的としたミラー駆動をモーターで行う新機構が導入されました。そしてこの時期から、僕は高画素機でも気軽にシャッターを切ることができるようになったのです。ということで、より個人的ですが、K-1は同じ高画素一眼レフとしてどれだけ手持ちで、気軽にシャッターを切って問題なく撮影できるかというのが、僕が最初に知りたいところでした。

【写真2】ペンタックスK-1の機構的特徴である「フレキシブルチルト式液晶モニター」は、ライブビュー撮影で威力を発揮する(画像をクリックすると大きくして見られます)

もちろん一眼レフが問題なく作動するというのは、ブレなく、AFやAEが適切に作動をするかということになるのですが、手ブレ補正機構の有無、レンズの明るさ、絞り値の設定、撮影感度がいくつかなど、さまざまな要素が組合さって撮影結果がでてくるのですから、簡単に判断することはできません。それでもあえて最初にいってしまえば、K-1はきわめて軽快に気楽にフルサイズ機としての撮影ができました【写真2】。細かいことに関しては、それぞれの撮影の場面で触れていくことにします。
撮影レンズは、K-1にとっては最もスタンダードな「HDペンタックス-D FA 28~105mmF3.5-5.6ED DC WR」を使用。このレンズは3.75倍のズームで、K-1の発売直前の4月下旬に登場しました。外観はおとなしいですが、11群15枚構成、非球面レンズ2枚、特殊低分散ガラス、異常低分散ガラスを各1枚使い、球面収差と色収差の除去に配慮されたフルサイズ機用高画質レンズです。

■実際に撮影してみる

基本的には、いつもと変わらない撮影チェック場所を押さえて、今回は使用を夏季休暇のタイミングに合わせることができましたので、3泊4日の東北旅行にペンタックスK-1を同行することにしました。

【作例1:英国大使館正面玄関】焦点距離34mm、絞り優先AE、F5.6・1/1000秒、ISO AUTO 200、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例1:英国大使館正面玄関

いつものシーンです。梅雨明けを待って撮影しましたが、この日ほど、やはり写真の写りぐあいは、天候に大きく依存するのだなとつくづく知らされました。わりと浅めの空色ですが、露出補正もしなくノーマルのままでのクリアで感じのよい発色です。撮影は、これまたいつものように焦点距離約35mm、絞りF5.6に設定して、建物中央上部のエンブレムに合わせてあります。シャッターは、同じ条件で最低5回以上切り、画素等倍に拡大した中からベストなカットを選んでいます。焦点距離は撮影画角を他機種とだいたいそろうようにして35mm、絞りはF5.6です。結果はご覧のとおりで、画素等倍に拡大して見てもエンブレムを含め高画素機らしくしっかりと描写されています。もちろんこの描写力は、撮影レンズの性能にも依存するのですが、ズームレンズながらしっかりと描写されています。特に左右門柱の英国大使館の金属プレートの文字は克明に写しだされています。
≪撮影データ≫焦点距離34mm、絞り優先AE、F5.6・1/1000秒、ISO AUTO 200、AWB、三脚使用
本シリーズでは、他のカメラでも、撮影日時は違いますが、ほとんど同じ条件で英国大使館正面玄関を定点撮影してありますので、バックナンバーで他機種と比較してご覧ください。

【作例2a:いつものマンション壁面】歪曲補正なし:焦点距離28mm、プログラムAE、F7.1・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【作例2b:いつものマンション壁面】歪曲補正あり:焦点距離28mm、プログラムAE、F7.1・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例2a、作例2b:いつものマンション壁面

マンションの立体感ある壁面を撮影することにより、解像力、質感描写、収差などを見ることができます。この撮影は今回2回出向きました。実は1回目でもうまく撮影できたのですが、どうも茶色いマンションの壁面の左右の稜線(写真をご覧いただくと意味がおわかりいただけると思います)が、ふくらんで見えるのです。つまりディストーションが発生していたのです。ズームレンズで広角28mm側ということでは、ある程度はいたしかたないのですが、やはり気になりますので、ボディのメニューからレンズ補正の“歪曲補正”をONにしてみました。【作例2a】は歪曲補正をOFFに、【作例2b】は歪曲補正をONの画像を示しました。
ご覧のように【作例2b】は歪曲補正ONの状態ですが、稜線のふくらみはみごと消えています。作例1の英国大使館の撮影では、歪曲補正はOFFのままでしたが、歪曲は気になりませんでした。しかしこの先さまざまな場面で撮影していくことを考え、以後歪曲補正はONでいくことに決めました。このほかレンズ補正には、周辺光量補正(OFF)、倍率色収差補正(ON)、回折補正(ON)がありますが、それぞれ()内に示すように設定しました。
画素等倍にして見るマンション壁面の描写特性は、3,640万画素らしい解像感であり、さらに左右のマンションの窓枠を見ると倍率の色収差もでていないので、レンズの基本性能が十分に発揮されているか、レンズ補正の倍率色収差補正ONが十分に機能しているのかとみました。いずれにしても専用レンズならではの描写特性といえます。
≪撮影データ(a、bとも共通)≫焦点距離28mm、プログラムAE、F7.1・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB、手持ち撮影

【作例3:八国山遠望】焦点距離28mm、絞り優先AE、F8・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例3:八国山遠望

東京都と埼玉県の境にある丘陵地帯にある八国山。かつて、この頂きから関東の8つの国が見渡せたというのですが、こちらもいつもの定点観測地点です。無限遠位置にある樹木の葉にAFでピントを合わせて、葉の切れ込み具合などから解像力や画像の平坦性を読み取るのですが、画素等倍で見たときに、わずかに木々の葉の切れ込みに甘さを感じますが、最広角の28mmということを考えると、周辺までくずれは少なく、同じ調子ですし、もともと画素等倍という現実のプリントにはありえない拡大率で見ているので、実際の写真レベルではまったく問題のない必要十分な描写だと考えます。
≪撮影データ≫焦点距離28mm、絞り優先AE、F8・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB、三脚使用

【作例4:ハスの花(1)】焦点距離105mm、プログラムAE、F7.1・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例4:ハスの花(1)

八国山の森の手前にはハス池とショウブが植わっている田んぼ(湿地)があるのですが、K-1を持参したときにタイミングよくハスの花が咲いていました。中央の花のメシベにピントを合わせましたが、画素等倍に拡大して、その部分と額を見るとまさに高画素タイプの描写です。
≪撮影データ≫焦点距離105mm、プログラムAE、F7.1・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB

【作例5:ハスの花(2)】焦点距離105mm、プログラムAE、F10・1/400秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例5:ハスの花(2)

上の花と同じ焦点距離ですが、早朝の斜光線が花びらに当たり、透過した感じが美しいのでシャッターを切りました。また、背後の水面に光り輝く光芒の形がほぼ真円を描いているのがくせのない描写特性をこのレンズがもっていることを示しています。
≪撮影データ≫焦点距離105mm、プログラムAE、F10・1/400秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例6:切り株のキノコ】焦点距離48mm、プログラムAE、F9・1/250秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例6:切り株のキノコ

撮影の帰り道、畑のわきに残されていた木の切り株の上に生えているキノコがきれいでしたので、適度に近寄ってシャッターを切りました。画素等倍に拡大して見ると、笠の表面がまるで食用のシイタケのような描写をしているので、驚きました。高画素機とレンズ性能がうまくマッチした結果だと思うのです。
≪撮影データ≫焦点距離48mm、プログラムAE、F9・1/250秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例7:商家住宅の“のれん”】焦点距離45mm、プログラムAE、F4・1/60秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例7:商家住宅の“のれん”

旅先の青森県黒石市の古い街並みが残る小見世通り商家高橋家住宅ののれんです。正面からねらっていたところ、風が吹き込んでひらりと舞ったところでシャッターを切りました。色調はノーマルの設定ですが、とくに派手に再現されたということもなく生地の色も自然です。しっかりと屋号が記されていますから「店の暖簾にかかわる」とは、こういうことをいうのでしょうね。
≪撮影データ≫焦点距離45mm、プログラムAE、F4・1/60秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例8:商家住宅の“花嫁衣裳”】焦点距離40mm、プログラムAE、F4・1/15秒、ISO AUTO 3200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例8:商家住宅の“花嫁衣裳”

通りを散策していて、さりげなくのれんをかき分けて入った土間のテーブルで地元農家手作りのりんごジュースをいただいた後に、薄暗い居間に飾られていた打掛を撮影させてもらいました。ISO 感度はAUTO設定で3200に自動的にアップしましたが、ノイズ感はまったくなく、見た目以上に明るく、色調、解像感とも素晴らしく描写されました。打掛は色違いで季節に応じ3種類あるとのことですが、この白地にきらびやかな金赤薄緑の絵柄は夏用だそうです。背後に見える屏風は100年以上前に描かれたそうですが、この渋さがきらびやかな打掛をいっそう引き立てています。高橋家の建物は江戸の中期に建てられた商家の住宅で、国の重要文化財に指定されています。
≪撮影データ≫焦点距離40mm、プログラムAE、F4・1/15秒、ISO AUTO 3200、AWB

【作例9:黒石市の「ねぷた」】焦点距離28mm、プログラムAE、F3.5・1/50秒、-1EV、ISO AUTO 400、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例9:黒石市の「ねぷた」

旅の一日目を終え、宿で食事の後、露天風呂に入っていると、遠くから「ヤーレヤーレヤー」というようなかけ声が聞こえてきました。時期的に、ねぷたの行列がくるのだろうと、入浴もそこそこ宿の前にK-1を持ってでると、あと少し待つと宿の玄関前まで行列がくるというので、待機して撮影した1コマです。露出は補正なしだと、ねぷたを引いている人たちや山車もほんのり写りいい感じなのですが、ねぷた灯籠の彩色された絵が露出オーバー気味になるので、-1EVの補正をかけました。このねぷたは昨年の優秀賞だそうです。灯篭そのものが、十分な明るさを持っているので、感度もさほどアップしなく、手持ちでも十分に撮影できました。彩色された灯篭は、色・ピントとも素晴らしく、路面など暗部の描写もノイズは感じさせません。
≪撮影データ≫焦点距離28mm、プログラムAE、F3.5・1/50秒、-1EV、ISO AUTO 400、AWB

【作例10:田んぼアート】焦点距離48mm、プログラムAE、F9・1/250秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例10:田んぼアート

青森県南津軽郡田舎館村の田んぼアート。田んぼをキャンバスに見立て、7色の稲を使い分けて植えて絵を描いてあります。今年のテーマはゴジラと真田丸だそうで、この写真は、道の駅いなかだて「弥生の里」展望台から俯瞰し、上部に地平線を入れて撮影しました。稲の部分を画素等倍にしてみると、フォーカスエリアの設定にもよりますが、手前のほうが1本、1本がきれいに分解して見えます。ここまで拡大すると、F9にまで絞られてもパンフォーカス的な描写にならないのは、デジタルならではの描写特性です。
≪撮影データ≫焦点距離48mm、プログラムAE、F9・1/250秒、ISO AUTO 200、AWB

2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

【作例11:ひまわり畑】焦点距離53mm、プログラムAE、F10・1/400秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例11:ひまわり畑

津軽市木造付近を車で走っていて突然現れた小ぶりな花のひまわり畑です。とくに観光名所ではないようですが、簡単な高見台、迷路なども作られていましたから、地域おこしのひとつなのでしょう。プログラムAEで絞りF10と絞られていますが、ずばりピントを合わせた花の描写は高画素タイプならではのもので、緻密で高解像な描写を示していますが、背後のアウトフォーカスした花はボケにクセもなく素直で柔らかな描写です。
≪撮影データ≫焦点距離53mm、プログラムAE、F10・1/400秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例12:イカの天日干し】焦点距離73mm、プログラムAE、F7.1・1/200秒、ISO AUTO 100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例12:イカの天日干し

青森県鰺ヶ沢の焼きイカ店「七里長浜きくや商店」で飼われている秋田犬“わさお”は観光客に人気です。訪れた時も午前中の早い時間でしたが、すでに見物客が大勢いました。聞くところによると、きくや商店の人気スポットは、わさお、イカの天日干し、群生するカゴメとネコだそうです。当日は曇天でしたので、青空にイカがというという連想とは異なりましたが、斜めからアップした1枚です。斜めからの撮影ですので大きく拡大するとピントが見えにくくなりますが、それでも中央部合焦ポイントのイカの皮は微細に生々しく再現されています。
≪撮影データ≫焦点距離73mm、プログラムAE、F7.1・1/200秒、ISO AUTO 100、AWB

【作例13:きくや商店のカモメ】焦点距離105mm、プログラムAE、F11・1/500秒、ISO AUTO 100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例13:きくや商店のカモメ

きくや商店の倉庫の屋根にたたずむカモメです。人のいる近くに多数のカモメが群れているのは少ないそうで、テレビ番組の珍百景でカモメが大量にくる店として紹介されたそうです。そのカモメに餌をあげる瞬間の写真もたくさん撮りましたが、飛び立ったカモメの向きがてんでばらばらでまとまりがないので、屋根の上にとまっているカットを選びました。拡大して見るとカモメの顔は怖いのです。天候は、曇天でしたが十分に明るいため、ISO 100でF11・1/500秒という露出でしたが、デジタル時代のプログラム露出にしてはF11と絞り込まれるのは珍しく、レンズの回折補正がONに設定されているかなとも思うのですが、OFFにしたのと比較はしていませんので、あくまでも僕の推測の範囲です。
≪撮影データ≫焦点距離105mm、プログラムAE、F11・1/500秒、ISO AUTO 100、AWB

【作例14:ペンタックスファンの工藤さん】焦点距離45mm、プログラムAE、F8・1/400秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例14:ペンタックスファンの工藤さん

わさおプロジェクトのチーフリーダー工藤健さんは、子供の頃からペンタックスファンで、わさおの写真はペンタックスの一眼レフで10万枚以上撮影したそうです。持参カメラがK-1でしたので、話しかけられました。本来ならわさおをと思いましたが、わさおに相手にされませんでしたので、工藤さんを掲載です。わさおはひだりのポスターに写っています。工藤さんに声をかけ、振り向きざまにシャッターを切りました。描写はいかにもペンタックスらしい精緻な写りです。
≪撮影データ≫焦点距離45mm、プログラムAE、F8・1/400秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例15:五能線普通列車】焦点距離105mm、プログラムAE、F8・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例15:五能線普通列車

きくや商店の脇を五能線が走っています。鯵ヶ沢駅の時刻表を調べると、15分ほど待つと、上り、下りの2本の列車が通ることがわかりましたので、さっそく鉄道カメラマンに変身することにしました。撮影にあたっては、連写モードHに設定して行いました。レンズの105mmという焦点距離では少し物足りなく、200mmぐらいあるといいなと思った次第。
≪撮影データ≫焦点距離105mm、プログラムAE、F8・1/250秒、ISO AUTO 100、AWB

【作例16:緑のハーモニー】焦点距離28mm、プログラムAE、F7.1・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例16:緑のハーモニー

鯵ヶ沢町のはずれに、日本一の大イチョウと書かれた集落があり、近寄ると確かに巨大イチョウで緑の葉が茂っていますが、イチョウはやはり黄葉の頃がベストだと思うのでパス。さらに集落の中に進むと、畑の中にあるいくつかの小屋が屋根から壁まで、すべてペンキで青く塗られているのです。もっと奥へ行くと、しっかりと実を付けた緑の稲穂の向こうに、こんどは緑に塗られた3軒の小屋を見つけました。緑の稲穂に、緑の小屋と緑の森、同じ緑でもまったく違う色なのですが、微妙な違いがしっとりと自然の中に溶け込んでいるのです。この集落の人々はどのような色彩感覚をもっているのだろうかなどと考えながら、自然の色彩と調和した緑に塗られた小屋を自然の一部としてとらえるように広角側で撮影しました。画面の平坦性も良く、稲穂は拡大してもきれいに分離描写されています。
≪撮影データ≫焦点距離28mm、プログラムAE、F7.1・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例17:青池】焦点距離28mm、プログラムAE、F3.5・1/50秒、-0.7EV補正、ISO AUTO 400、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例17:青池

世界遺産でもある青森県白神山地にある十二湖のなかの1つで、ブナの自然林に囲まれて、最も神秘的で美しいとされるのがこの青池です。青沼の色は、見る角度と光線の具合などによって色が変わります。今回の旅行は、天候がいまひとつすぐれず、帰る前日の午後に訪れた青池で、到着と同時にどうにか日が差しました。そのチャンスを逃さないようにと撮影しましたが、光がスポットのように差したカットは露出補正をマイナス側に0.7かけましたが、その部分が飛んだ感じになりました。結果としてはハイライトからシャドーまである幅広い階調の写真となっています。池の上に白いものが輝くように浮いているのは、何かの花弁のようです。幻想的な青色に加え、まるで光の粒のような神秘さを加えてくれました。
≪撮影データ≫焦点距離28mm、プログラムAE、F3.5・1/50秒、-0.7EV補正、ISO AUTO 400、AWB

【作例18:艫作埼灯台】焦点距離105mm、プログラムAE、F11・1/500秒、-0.3EV補正、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例18:艫作埼灯台

青森県西津軽郡にある黄金崎不老ふ死温泉の近くにある艫作埼(へなしさき)灯台です。今回の旅行では、数少ない青空を入れられた写真です。やはり写真はこうありたいと思うのですが、限られた日程での撮影ですから、雨に降られなかっただけでも、まだ幸いだと思うのです。温泉旅館前の海岸にある混浴の露天風呂からは、日本海に沈む夕日を見ながら入浴ができるということですが、日帰り客の入浴ではむりのようです。
≪撮影データ≫焦点距離105mm、プログラムAE、F11・1/500秒、-0.3EV補正、ISO AUTO 200、AWB

【作例19:古いレンズ「SMCペンタックスFA43mmF1.9リミテッド」とのマッチング】焦点距離43mm、絞り優先AE、F1.9・1/400秒、ISO AUTO 100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【写真3】SMCペンタックスFA43mmF1.9リミテッドを装着したペンタックスK-1(画像をクリックすると大きくして見られます)
【写真4:新旧マウント部比較】左(新):電気接点が増えて、AFカプラーがないD FA 28~105mmF3.5-5.6。右(旧):AFカプラーがあるFA43mmF1.9(画像をクリックすると大きくして見られます)
●作例19:古いレンズ「SMCペンタックスFA43mmF1.9リミテッド」とのマッチング

過去のペンタックスレンズで、僕がいま一番気に入って使っているのは「SMCペンタックスFA43mmF1.9リミテッド」【写真3】です。いまでこそ各社AF一眼レフのレンズ駆動は、レンズ内モーターで超音波モーター仕様となりましたが、ペンタックスが最初に現在に続く技術でAF化したのは1987年発売のボディ内モーター式のSFXで、マウントは「KAfマウント」でした。その後1991年に発売のZシリーズで「KAF2マウント」になりましたが、 FA43mmF1.9は1997年に発売されたボディ内モーター用の交換レンズで、レンズ駆動はAFカプラー方式【写真4】によるものでした。
ペンタックスではありませんが、実は初期の高画素一眼レフでカプラー方式AFレンズでは、AF確度が低かったのです。その時点ではレンズ内超音波モーター仕様レンズの使用を勧められましたが、次にでた第2世代機では同じレンズでも問題はなくなりました。当初はAFカプラーのバックラッシュに避けがたいものがあると伝えられましたが、次世代機では解消したのでよかったのですが、この改良機登場までの2年間は、自分の考えていることが正しいのかとずいぶん悩まされました。
ということでSMCペンタックスFA43mmF1.9リミテッドを付けてK-1でさまざまな場面で試してみましたが、AF確度では特に問題は感じませんでした。作例はボタンクサギ(牡丹臭木)の花ですが、近所を歩いていて農家の垣根に咲いていたのを見つけたので撮影しました。
実はこのレンズ最近はミラーレスのフルサイズ機のソニーα7Rにマウントアダプターを介して使用していましたが。ピントはMFのライブビューで最大限拡大した状態で合わせていますが、やはり専用ボディでのAF撮影は楽です。今回の撮影も絞り開放で撮影しましたが、合焦ポイントは花ですが、しっかりと解像しており、左背後の自転車に乗った人のボケ具合も柔らかく、単焦点大口径レンズならではのものだと思います。
≪撮影データ≫焦点距離43mm、絞り優先AE、F1.9・1/400秒、ISO AUTO 100、AWB

【作例20a:リアル・レゾリューション・システムなし】焦点距離58mm、プログラムAE、F6.3・1/100秒、+1EV補正、ISO AUTO 400、WB:蛍光灯(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【作例20a:リアル・レゾリューション・システムあり】焦点距離58mm、プログラムAE、F6.3・1/100秒、+1EV補正、ISO AUTO 400、WB:蛍光灯(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例20:リアル・レゾリューション・システム

ペンタックスの一眼レフには手ブレ補正のShake Reduction機構を応用した、独自なシステムがいくつか組み込まれています。そのうちの1つがリアル・レゾリューション・システム(以下、RRと略します)。これはAPS-C判の「ペンタックスK-3 II」で最初に搭載された機能で、撮像素子を1画素ずつずらし、4枚の画像を合成し、高精細の画像を得ようというものです。本シリーズの第三十一回目に「ペンタックスK-3 IIのリアル・レゾリューション・システム」として使用して、大変効果があることが確認できていますので、前回は解像力チャートと金属カメラのコダックRF35を撮影して解像力と階調の広がりを確認しましたが、K-1ではその経験の上に立って、日本人形を撮影することにしました。撮影は、わが家の簡易スタジオで、照明は蛍光灯のスカイライト1灯です。【作例20a】はRRなし、【作例20b】はRRありです。この2枚を比較して、着物の生地、鹿の子絞りの帯の質感を見れば解像感が増し、高精細画質になっているのが一目瞭然です。使用レンズはFA 28~105mmF3.5-5.6です。
もともと3,640万画素の高画素に、さらに高解像、高画質のRR操作を加えることの有効性は、最終画質のプリントにどのように反映されるかは不明ですが、モニター観察上ではその差は明確なので、用途によっては価値ある画質向上となるのでしょう。
≪撮影データ、RRなし・ありともExifデータは同じ≫焦点距離58mm、プログラムAE、F6.3・1/100秒、+1EV補正、ISO AUTO 400、WB:蛍光灯
リアル・レゾリューション・システムは1ショットで4回シャッターを切るためにこのように動く部分のない静止画での撮影でたいへん有効でしたが、K-1には動体を検出した時にモザイク状のノイズを補正して画像を合成する“動体補正ON”というモードができたというので、「作例3:八国山遠望」のカットに引き続き、動体補正ONとOFFのモードで撮影してみましたが、どちらも風景ではうまくいきませんでしたので、その効果のほどは不掲載としました。4ショットのなかで、静止部分と動体部分を撮影と同時に差分を分別して、画像合成するとは言葉の上では理解できても、かなり高度な処理だと思うのです。いずれ、プロセッサーと画像処理技術の進歩により身近になると考えられますが、ぜひシステムとして完成させてほしいです。

【作例21a:ローパスセレクターOFF】焦点距離45mm、絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【作例21b:ローパスセレクターType1】焦点距離45mm、絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【作例21c:ローパスセレクターType2】焦点距離45mm、絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
●作例21:ローパスセレクター

Shake Reductionユニットを振動させることにより、ローパスフィルター効果を持たせてモアレの発生の低減をさせることができるモードです。この機能は2012年発売のペンタックスK-3から採用されました。撮影モードは、Type1:解像とモアレ低減のバランスをとった撮影、Type2:モアレ低減優先、ブラケット撮影の3種で、ブラケット撮影は、1ショットでOFF⇒Type1⇒Type2の順で撮影できます。
今回は、その効果のほどを比較するためにブラケット撮影モードで行いました。撮影はいつものように東村山の正福寺にある国宝の本堂で行いました。この本堂に屋根は杉板を薄く切って積み重ねたもので、あるとき偶然見つけたのですが、みごとほとんどのカメラでモアレが屋根の部分に発生するのです。
【作例21a】はローパスセレクターOFF、【作例21b】はローパスセレクターType1、【作例21c】はローパスセレクターType2です。OFFで色モアレがあり、Type1でわずかに残っていて、Type2で色モアレは消えました。もともと画素ピッチ4.8μmと小さいので、ローパスセレクターOFFでもモアレの発生は少ないようです。
≪撮影データ≫焦点距離45mm、絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例22:自動水平補正。左:OFF、右:ON】焦点距離28mm、絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると大きくして見られます)
●作例22: 自動水平補正

建築物や風景でわずかに斜めに構えた結果、できあがった画像で惜しむことがありますが、このモードに設定して写せば自動的に水平がでて撮影することができるのです。細かくいえば、レタッチソフトで補正したのと同じようにわずかに画角が狭くなるかと思うのですが、手持ちの風景撮影などでは便利このうえない機能です。
作例はわずかですが右上がりにカメラをセットして、【作例22左】には自動水平OFFのままを、【作例22右】には自動水平ONにした状態を載せました。この場面は、千鳥ヶ淵のお堀端ですが、石垣がもともと斜めに築かれているために水平を目視でだすのは難しいのですが、左OFFと右ONでは水面に対して水平がでていて、ONの場合の方は視覚的に安定感があります。今回はON・OFF比較のために三脚を使いましたが、手持ちだと撮影者の感覚や立ち位置とは無関係にジャイロで水平がでるので、撮影はすこぶる快適です。使用にあたっては、Shake Reductionの応用ですから、手ブレ補正機構の効果とはどのように作用しあうか使い込んでみる必要がありますが、きわめて有効な機能です。これもペンタックス高画素機ならではの特徴なのでしょう。
≪撮影データ≫焦点距離28mm、絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO AUTO 200、AWB

【作例23a:フルサイズでアオサギを撮影】焦点距離105mm、絞り優先AE、F6.3・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【作例23b:APS-C判でアオサギをクロップ撮影】焦点距離105mm(160mm相当画角)、絞り優先AE、F5.6・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【写真5】機能ダイヤルと設定ダイヤル(画像をクリックすると大きくして見られます)
●作例23: APS-C判でアオサギをクロップ撮影

フルサイズ機でAPS-C判で撮影すると同じ焦点距離のレンズでも画角が狭まり望遠効果が手軽に得られることになります。撮影法には、1) APS-C判レンズを使って自動切り替えする、2) APS-C判レンズを使って手動切り替えする、3)フルサイズ判レンズを使ってAPS-C判に手動切り替えして撮影する、という方法があります。いままでのフルサイズにもこのような機能は当然のこととしてついていたのですが、ペンタックスK-1を使っていたら、やってみたくなりました。それというのもボディ上部右に設けられた機能ダイヤルと設定ダイヤル【写真5】を操作するとカメラを構えてファインダーをのぞいたままでも簡単に切り替えられるのです。ペンタックスではスマートファンクションと呼んでいますが、Crop撮影のほか、露出補正、ISO感度、撮影コマ速度の切り替え、ブラケット撮影の幅変更、など9種の切り替え設定が簡単に行えるのです。
このクロップ撮影、たまたま近所の公園で池の対岸にアオサギを見つけ、なるべく近づいて撮影しようと思ってやってみたのですが便利でした。使用レンズはFA 28~105mmF3.5-5.6だったので、105mmの×1.5で160mm相当の画角となりましたが、もう少し望遠なら、このシーンではさらに効果的でした。このクロップ撮影した画面は3,200×4,800ピクセル、フルサイズは4,912×7,360ピクセルなので、必要十分な画素数であることはわかります。3,600万画素高画素機ならではの使い方です。なお撮影は連写モードHで行いましたが、APS-C判のほうが撮影コマ速度は速くなりました。撮影データが小さいのであたりまえですが、応用としてはこちらも使い道がありそうです。
≪撮影データ、作例23a≫焦点距離105mm、絞り優先AE、F6.3・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB
≪撮影データ、作例23b≫焦点距離105mm(160mm相当画角)、絞り優先AE、F5.6・1/200秒、ISO AUTO 200、AWB

■使ってみたら

ペンタックスファン待望のフルサイズ機です。市場では、4月の発売以来好調だと聞きます。使ってみて感じたのは、何度も繰り返しますが、やはり気軽に使える高画素機ということをつくづく実感しました。とくに夏休みの旅行に持参しての印象では、明るい所から暗い所まで、手持ち撮影でむりなく使用できたのはちょっとした驚きでした。これは高感度特性、ボディ内の手ブレ補正、レンズ性能などがうまく機能した結果だからだと思うのです。さまざまなシーンで自動感度アップしたISO 3200感度では、画像の荒れを感じさせませんでした。ここに掲載した以外のカットも、いわゆるブレたようなコマはまったくありませんでした。
K-1はいろいろな機能が盛りだくさんなボディですが、今回はその中でも個人的な志向を含めて、一般的な機能として、リアル・レゾリューション・システム、ローパスセレクター、自動水平補正、クロップ撮影を試用してみました。このうち今回の一番のお気に入り機能は、今までかなり気を使ってきた水平だしの最後のツメをやってくれる「自動水平機能」でした。このほか、個人的な興味からいうと、GPS、肌色補正などは、これから時間をかけて使いこなしたい機能です。ペンタックスとしてはアストロレーサーなどを加えて欲しいのかもしれませんが、個人的には興味の対象外です。これはスチルカメラに動画機能が必要かどうかということと似てはいるように見えますが、まったく別次元の判断になります。
そしてペンタックスK-1はフルサイズ機であると同時に、リコーイメージングのフラッグシップカメラであるわけです。この辺りは、搭載機能を種々多くした盛り沢山のフラッグシップでなく、カメラとしてどれだけ基本機能と性能がしっかりしているかということが大切であり、さらにいうならば連写も、最高約4.4コマ/秒も撮れれば十分なのです。
その点において、カスタムイメージの中にある、銀残し、クロスプロセスなどが、本来の色調のバリエーションである、鮮やか、風景、ナチュラル、雅、人物などと同じ階層に置かれているのも不思議でした。もともと銀残しやクロスプロセスはフィルム時代でもプロラボは対応してくれませんでしたし、むしろ現代のトイカメラの延長にある変形処理です。なんでそこまでいうかと思われるかもしれませんが、色調オートセレクトの逆隣はクロスプロセスなのです。つまり基本設定から簡単にクロスプロセスにセットされる可能性があるのです。K-1はカメラとしての基本機能と性能がしっかりしているだけに、よけい気になる部分なのです。
ペンタックス一眼レフの最高級機として、リコーのフラッグシップ機として、さらなる整理・進化を大いに期待します。
(2016.08)