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ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)

第三十六回「キヤノンEOS 5Dsを使ってみました」

コーナー名
ライカに始まりライカに終わる
著者
市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)
対象機材・テーマ
キヤノンEOS 5Dsを使ってみました
概要・導入
キヤノンの高画素タイプ一眼レフはEOS 5Dsと EOS 5DsRですが、このカメラが登場するまでには高画素タイプカメラにはさまざまな考え方がありました。いわゆる高画素タイプは2012年に発売された3,630万画素のニコンD800とD800Eに始まりました。このカメラでは光学ローパスフィルター(OLPF)組み込んだD800と、光学ローパスフィルター効果を持たせないD800Eの2機種を用意したのです。2013年になるとソニーが同等の3,640万画素で光学ローパスフィルターを外したソニーα7Rをミラーレス機で発売しました。そして2014年にはニコンはD800シリーズの改良型として光学ローパスフィル…

1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

キヤノンの高画素タイプ一眼レフはEOS 5Dsと EOS 5DsRですが、このカメラが登場するまでには高画素タイプカメラにはさまざまな考え方がありました。いわゆる高画素タイプは2012年に発売された3,630万画素のニコンD800とD800Eに始まりました。このカメラでは光学ローパスフィルター(OLPF)組み込んだD800と、光学ローパスフィルター効果を持たせないD800Eの2機種を用意したのです。2013年になるとソニーが同等の3,640万画素で光学ローパスフィルターを外したソニーα7Rをミラーレス機で発売しました。そして2014年にはニコンはD800シリーズの改良型として光学ローパスフィルターを外したD810を発売。キヤノンが光学ローパスフィルターを組み込んだEOS 5Dsと光学ローパスフィルター効果を打ち消したEOS 5DsRを6月に発売し、さらにソニーが4,240万画素のα7R Mark IIを8月に発売したのが現在に至るまでの経緯です。
この間いくつか話題に上ったのは、1)高画素に加え光学ローパスフィルターを外すと高鮮鋭画像が得られる、2)ピントが合いにくく、カメラがブレやすい、などでした。これらに対し、ニコンはD800Eで光学ローパスフィルター効果をなくし、D810では、ミラーショック軽減機構を組み込み、光学ローパスフィルターを外したのです。これに対しソニーα7は、ミラーレスですからショックは少ないわけで、さらにピントは像面によるコントラスト検出だから精度が高いということになります。もっともニコンD800とD800Eでは、Gタイプレンズの使用、ミラーアップ撮影、ノイズキャンセラーのOFF、三脚使用のライブビュー撮影などを推奨してきました。
このような経緯の中で、僕はたまたま毎年担当しているCP+で行われる上級エンジニアパネルディスカッションのコーディネーターとして、2013年、2014年にキヤノンとしては高画素一眼レフはやらないのですか?とキヤノンの技術責任者に質問してきました。答えとしては技術的には十分可能で、すでに当時5,000万画素のセンサー技術は確立されており、撮像素子の技術としては発表済みだということでした。そしてさらに聞くと、撮像素子の大きさに対し、適切な画素数というのがあるというようなお話をしていましたが、結局、フルサイズで5,060万画素のEOS 5DsとEOS 5DsRを2月のCP+2015の直前に発表したのです。当然、CP+2015のパネルディスカッションでは高画素に対する考え方、カメラブレへの対策、光学ローパスフィルターありのEOS 5Ds、光学ローパスフィルター効果なしのEOS 5DsRの技術などを聞きました。その後、PHOTONEXTの技術セミナーなどでも、両機に対する詳細な話を聞きましたが、僕個人の印象として得たものは、キヤノンは高画素タイプ一眼レフのフラッグシップモデルとして作ったものの、いまひとつ積極的ではないように感じました。また光学ローパスフィルターは画素数が上がってもこれからも必要だと考えていて、光学ローパスフィルター効果なしの5DsR機は、モアレが発生する確率が高くなっても、欠点を活かし究極の解像を目指すという人ために作った明言していることです。

【写真1】EF24~70mmF4L IS USMを装着したキヤノンEOS 5Ds(画像をクリックすると大きくして見られます)
■僕がEOS 5Dsモデルを選んだ理由

結局、あれこれ悩んだ結果、今回、僕は光学ローパスフィルターが組み込まれたEOS 5Ds【写真1】を使ってみることにしました。なぜか、そのほうがキヤノンの高画素一眼レフ開発の目指した目的に近いのではと感じたのです。そしてもうひとつ、同じ高解像度でもA2判プリントで384ppiの解像度が、250ppi前後の他機種とどれだけ異なるのだろうかということなどを考えて、あえて光学ローパスフィルターありのEOS 5Dsを使ってみようと考えたのです【図1】。

【図1】キヤノンEOSシリーズの撮像素子部分の仕様をまとめてみました(画像をクリックすると大きくして見られます)

PHOTONEXTの技術セミナーで聞いた話によると、EOS 5Dsの高画素を活用する仕様として、1)ミラー振動制御システムを採用、2)新ピクチャースタイル「ディテール重視」(細部表現力を重視したシャープネス設定)、3)光学Low Pass Filterをキャンセルし、さらなる高解像度を求めたEOS 5DsR、4)クロップ機能(×1.3、×1.6)で疑似望遠撮影可能、などがあげられています。このうちミラーショックを軽減させるためにはカム駆動方式を採用したということですが、ニコンもD610とD810では同じような機構を導入しているので、発売時期は多少ずれていますが、考えることはどちらも同じだなと思うわけです。さらにディテール重視のピクチャースタイルでは、スタンダードや風景モードよりシャープネスを上げるというので、これはまさにデジタルならではのことであり、なるほどと思うわけです。
これに加え、ミラーアップと電子先幕シャッターによる低振動撮影として「LV静音撮影モード」、レンズやフィルターを通過し光線が収差や回折、ローパスフィルターなどの要因で理想と異なるときに本来の形に戻す「デジタルオプチマイザー」機能、シャッターレリーズし、ミラーがアップしてシャッターが切れるまでの時間を調整する「レリーズタイムラグ任意設定」などの機能を載せています。キヤノンによると、単に画素数を増やしても、その画素数を活かすことはできないとして、カメラ振動の抑制、高画素を活かす画像処理(ディテール重視)、入力信号の改善(デジタルオプチマイザー)を行なったというのです。
なお、キヤノンによると2,000万画素APS-Cの撮像素子を35mm判フルサイズにしたのがEOS 5Dsの5,060万画素だというのです。そこで【図1】の画素ピッチを見ると4.1μmなので、現行の最もスタンダードなEOS 7DとEOS 7D MarkIIが同じ画素ピッチなので、このフルサイズ判ということになるのです。さらにAPS-Cの現行モデルとしては画素ピッチ3.7μmのEOS8000DとEOS Kiss 8xi、EOS M3があるわけですが、この関係をあてはめるとキヤノンはすでにフルサイズで6,050万画素のイメージャー技術を確立しているとみれるわけです。

2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

【写真2】三脚とケーブルレリーズを使って遠景の森を撮影(画像をクリックすると大きくして見られます)
■実際の撮影にあたって

今回の撮影にあたっては、カメラ製造側が最初からこれだけのことを提示してきているわけですから、高画質を得るためにはその方法に極力沿って行うことにしました。
まずランダム撮影以外の固定撮影は、三脚にはフィルム時代の8×10”ビューカメラ用に使っていたHUSKY Quick Setを用意し、シャッターはケーブルレリーズを介して切ることにしました【写真2】。この組み合わせは、大きさ・重量などからして僕的には不本意な組み合わせですが、チャンピオンデータを引き出すためにはということで頑張りました。そしてレンズは、標準ズームで高級LタイプのEF24~70mmF4L IS USMを使いました。

【作例1:いつもの英国大使館正面玄関】焦点距離:35mm、絞り優先AE(F5.6・1/500秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例1:英国大使館正面玄関】
いつもの英国大使館正面玄関です。撮影条件としては、レンズの焦点距離を35mmにセットして、絞り優先AEのF5.6で撮影しています。ピントは、61点の測距点のうち中央最上部の1か所が建物中央上のエンブレムにくるようにしてスポットAFで合わせています。シャッターを切るのは、いつもなら5カット程度で済ませるのですが、今回はブレだけでなくAFもあるだろうからと13回切った中から、最も高解像であろうというカットを選び出しました。そして画質的にどうだろうかということになりますが、エンブレムを画素等倍まで伸ばしてみると、わずかに柔らかさを感じますが、実用上は十分に解像しています。このあたりの見え方が、光学ローパスフィルターが入っているからかもしれませんが、ピクチャースタイルを「スタンダード」でなく、「ディテール重視」にセットしておけばもっとシャープになり、見え方が大きく変わったのかもしれません。ここに掲載の画像はJPEGですが、RAWデータを使えばもっとカリッと仕上げることは可能でしょう。なお、掲載は13カットのうちの1枚で、画素等倍で見ると微妙な違いを各カットとも見せていますが、A3ノビぐらいにプリントしても、その差を見つけ出すのは大変だと思います。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F5.6・1/500秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用。

【作例2:遠景の森。ピクチャースタイル:スタンダード】焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例2:遠景の森。ピクチャースタイル:スタンダード】
遠くに見える森の樹木の葉がどれだけ細かく解像するか、ピクチャースタイルはスタンダードで、ピントは1点AF(以下同様)で、ファインダーを覗き中央部樹木に合わせました。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例3:遠景の森。ピクチャースタイル:ディテール重視】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例3:遠景の森。ピクチャースタイル:ディテール重視】
遠くに見える森の樹木の葉がどれだけ細かく解像するか、作例2の設定でピクチャースタイルをディテール重視に設定して撮影しました。スタンダードのピクチャースタイルに比べると、全体的に色もわずかに鮮やかになり、シャープさが増した結果でしょうか、視覚的には細かく解像している感じがします。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:ディテール重視、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例4:遠景の森。ミラーアップの2秒後にシャッターが切れるモード、ピクチャースタイル:スタンダード】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例4:遠景の森。ミラーアップの2秒後にシャッターが切れるモード、ピクチャースタイル:スタンダード】
遠くに見える森の樹木の葉がどれだけ解像するか、ピクチャースタイルはスタンダードで、ミラーアップの2秒後にシャッターが切れるように設定して撮影してみました。ミラーアップして、シャッターが切れるタイミングをずらすのは、1/8秒、1/4秒、1/2秒、1秒、2秒後までセットでき、レリーズ全開2回押しで任意の時間で切ることもできます。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例5:遠景の森。ミラーアップの2秒後にシャッターが切れるモード、ピクチャースタイル:ディテール重視】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例5:遠景の森。ミラーアップの2秒後にシャッターが切れるモード、ピクチャースタイル:ディテール重視】
遠くに見える森の樹木の葉がどれだけ解像するか、ミラーアップの2秒後にシャッターが切れる設定で、ピクチャースタイルはディテール重視にして撮影しました。ミラーアップして、シャッターが切れるタイミングをずらした結果として、このカットは少なくとも今回撮影した設定では最も解像が高く感じました。ディテール重視モードでシャッター遅延が最も効果が高かったというわけですが、三脚は8×10”用に使っていた大型のHUSKY Quick Setを用意し、シャッターはケーブルレリーズで切ったこともありますが、画素等倍というプリントではありえない拡大率での話なので、プリントにすると、少なくとも今回比較撮影したカットは皆同じように見えるかもしれません。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:ディテール重視、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例6:遠景の森。ミラーアップの1/4秒後にシャッターが切れるモード、ピクチャースタイル:ディテール重視】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例6:遠景の森。ミラーアップの1/4秒後にシャッターが切れるモード、ピクチャースタイル:ディテール重視】
遠くに見える森の樹木の葉がどれだけ解像するか、ピクチャースタイルはディテール重視のまま、ミラーアップの1/4秒後にシャッターが切れるように設定し、撮影してみました。ミラーアップして、シャッターが切れるタイミングをずらすのは、前記のように1/8秒、1/4秒、1/2秒、1秒、2秒後までセットでき、レリーズ全開2回押しで任意に切ることもできますが、作例5の最長秒時の2秒に加え、短い1/4秒にセットしてその違いがあるかを見たのです。結果は、2秒も、1/4秒も大きく変わりません。これは、強固な三脚・ケーブルレリーズ使用による成果が十分に発揮されたと考えますが、いずれにしても画素等倍という通常プリントではありえない拡大率での話なので、実際にプリントして比較すると、少なくとも今回比較撮影したカットは皆同じように見えるかもしれません。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:ディテール重視、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例7:遠景の森。ライブビュー静音モード1、ピクチャースタイル:スタンダード】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例7:遠景の森。ライブビュー静音モード1、ピクチャースタイル:スタンダード】
ライブビュー撮影は一眼レフカメラとは異なった撮影法なので本来ではありませんが、コマーシャルのスタジオ撮影などでは重要とされるモードです。このライブビュー撮影には、ライブビュー静音モードがあり、モード1とモード2があり、モード1は作動音を抑えた撮影ができ連続撮影もでき、モード2はシャッターを全押ししたときに1枚だけ撮影し、シャッターボタンそのまま全押ししているとカメラの作動が停止し、半押し状態に戻したときにカメラが作動するので、撮影する瞬間の音を最小限に抑えることができるというのです。ここでは、簡単のために静音モード1で、ピクチャースタイルをスタンダードにした状態で撮影しました。写された結果からすると、ピクチャースタイルを同じスタンダードにしてありますが、ライブビューで撮影した結果より位相差検出AFで撮影したカットのほうが少し解像は高いように見えますが、露出レベルの違いからかも知れません。いずれにしても画素等倍という現実のプリントではありえない拡大率なので、この差をいっても始まらないでしょう。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例8:遠景の森。ライブビュー静音モード1、ピクチャースタイル:ディテール重視】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例8:遠景の森。ライブビューモード1、ピクチャースタイル:ディテール重視】
ライブビュー静音モード1で、ピクチャースタイルをディテール重視にした状態で撮影しました。こちらは位相差検出AFで撮影したカットよりライブビューで撮影した結果よりのほうがわずかに解像は高いように見えますが、これはディテール重視に設定した結果だと思われます。いずれにしても画素等倍という現実のプリントではありえない拡大率での判断なので、この差をいっても始まらないでしょう。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/125秒)、ISO100、ピクチャースタイル:ディテール重視、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例9:モアレ発生のチェック、ピクチャースタイル:スタンダード】焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/100秒)、ISO100、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例9:モアレ発生のチェック、ピクチャースタイル:スタンダード】
ここのお堂の屋根を撮ると、いままでどのカメラもモアレが発生していました。あるときにそのことを見つけて以来、光学ローパスフィルターがなく、鮮鋭度が高いことを自慢する機種がでてくると、いつもこのお堂を撮影してきました。今回のキヤノンEOS5Dsでは、EOS5DsRが光学ローパス効果を打ち消して鮮鋭度が高くなると、キヤノンはいっていますが、この部分の考え方は先述のようにあまり積極的ではありません。むしろ今後とも光学ローパスフィルターが必要であると言い切っているあたりが、他社とは大きく異なる点です。そこで、今回はEOS5Dsの光学ローパスフィルターの効果のほどを見てみようということになりました。結果は、実際の画像にも示しましたが、今までに見たことがないほどにみごとに屋根の板が細かく描写されています。しかも、モアレはまったく発生していないのです。これは、原理的に発生しにくいとされてきたフォビオンセンサーよりもみごとです。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/100秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例10:モアレ発生のチェック、ピクチャースタイル:ディテール重視】(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例10:モアレ発生のチェック、ピクチャースタイル:ディテール重視】
作例9に対して、ピクチャースタイルをディテール重視にしてみました。ディテール重視にすることで、鮮鋭度が増すことでモアレが発生するのではないかとも考えましたが、まったくそのようなことはなく、作例9と同様に、今までには見たことがないほどにみごとに屋根の板が細かく描写されています。しかも、モアレはまったく発生していないのです。ただし画像全体は、ピクチャースタイルをディテール重視にしてもスタンダードとほとんど同じに見えます。風景でのモード変更とは仕上がり方が違うようです。とにかくモアレは見えません。この手の問題はむずかしいですね。すでにモアレの発生具合だけをチェックしたレポートがありますので、そちらを合せてご覧ください。
焦点距離:35mm、絞り優先AE(F8・1/100秒)、ISO100、ピクチャースタイル:ディテール重視、AWB、三脚、ケーブルレリーズ使用。

【作例9】と【作例10】を見る限りモアレに関しては素晴らしい結果がでました。いずれにしても、撮影に使用したレンズ(EF24~70mmF4 L)の解像力、5,040万画素という撮像素子に対し、最適化した光学ローパスフィルターを配置した結果が功を奏したのだろうと思いますが、大変気持ちの良い画像が撮影できたことは、特筆されることだと思います。

■ランダムに撮影してみると

以上までは、三脚を使って細心の注意を払って撮影した結果ですが、高画素一眼レフは三脚使用でというのは、ニコンD800/D800Eからの考え方でしたが、その後D810に発展してから、かなり安定して手持ち撮影が可能となりました。EOS5Dsも同じようにミラー振動制御システムを採用していますが、上記の作例では最大限高画素の特徴を引き出すべく、超重量級の三脚にケーブルレリーズ、シャッター走行遅延モード、ミラーアップライブユー撮影など、可能な限りのカメラブレ効果を防止する撮影を行いましたが、今回はあまりにも撮影時にブレないようにと気を使ったためにか、ブレによる具体的な画像の劣化は画素等倍の画像でも明確には確認できなく、最も効果的であったのはピクチャースタイルの「ディテール重視」モードでした。つまり画像処理による画像の向上のほうが効果あったのです。とはいっても、これはブレ防止に対する配慮をカメラ製作側とカメラ使用者側が最大限配慮した結果の成果でありまして、実際一眼レフカメラならば手持ち撮影でどれだけ良い結果が得られるかというのが最も知りたい部分だと思うのです。
そこで、実際はどうなのだろうかということで、手持ち撮影の結果をいくつかお見せしましょう。

【作例11:いつものチャート的なマンション】焦点距離:24mm、プログラムAE(F4・1/1000秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例11:いつものチャート的なマンション】
このところ数回登場している立体的に細かくタイルが貼られているマンションです。ここでもやはり柔らかく描写されていますが、それぞれのタイルはしっかりと見えます。ピクチャースタイルは初期設定の「スタンダード」のままであり、やはり「ディテール重視」にセットしておけば壁面のタイルはもっとシャープになっただろうと考えられます。もうひとつ、実は同じシーンを他のカメラ、レンズで撮影しているのです。それによりますと、茶色いマンションの左隣の白いビルの窓枠には倍率色収差の発生らしきものが認められましたが、このキヤノンの組み合わせではほとんど見えないのです。このあたりはレンズの基本性能による部分であるかもしれませんが、レンズ光学補正機能による周辺光量補正か色収差補正やデジタルオプチマイザー機能の働きも加味されていると思うのです。このような技術は、その動作内容が見えないだけに、サードパーティーのレンズを使ったときにこのカメラではどのように機能するか、など大いに興味がわく部分です。
焦点距離:24mm、プログラムAE(F4・1/1000秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例12:ヒガンバナをアップ】焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/500秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例12:ヒガンバナをアップ】
撮影した時期はちょうどヒガンバナの咲く季節でした。どれだけ近寄れるかはレンズのもつ機能によるものですが、撮影レンズの70mm望遠側のマクロ域に入る手前ぐらいのポジションでクローズアップしました。画素等倍までモニター上で拡大して見ますとメシベの先にピントがきていて花粉まで見えますからズームレンズといえども画質的には十分なものを感じます。
焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/500秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例13:ヒガンバナの群生】焦点距離:24mm、プログラムAE(F11・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例13:ヒガンバナの群生】
公園のわきにヒガンバナの小さな群落を見つけました。広角側の焦点距離24mmで手前の花にピントを合わせ、花と花が重なる部分をわざと作ってシャッターを切りましたが、花の赤い色が飽和して溶け込むようなことはありませんでした。
焦点距離:24mm、プログラムAE(F11・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例14:白い花の群落】焦点距離:24mm、プログラムAE(F13・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例14:白い花の群落】
白い花が満開のタマスダレの群落をねらってみました。タマスダレの白い花とその葉が1本1本、針のように細いのですが、拡大して見る十分細かく分解され再現しているのがわかります。
焦点距離:24mm、プログラムAE(F13・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例15:池のほとりで】焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/400秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例15:池のほとりで】
いつもの公園の池を何気なく見ると、止まり木にしっかりとカワセミが羽を休めていました。正午近いので、本来は森の中へ行っているはずなのにと思い、カメラを向けましたが、ボディについているレンズの最も長焦点側は70mmなのでまったくむりとは知りつつ、シャッターを切りました。それにしても残念なのは最も望遠側が70mmであることです。しかし、画素等倍まで拡大して見ると、カワセミが止まり木にしっかりいるのがわかります。これぞ高画素タイプならではのなせる業だと思います。
焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/400秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例16:レストランで写真展】焦点距離:50mm、プログラムAE(絞りF4・1/40秒)、ISO400、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例16:レストランで写真展】
知人がレストランで写真展を開きました。せっかくだからと数枚シャッターを切りましたが、その中に1枚おもしろい写真を見つけました。ピントは左から3本目のボトルに合わせましたが、そのキャップの上を画素等倍に拡大してびっくりしました。なんと、撮影距離からは目では確認できない小さなホコリがしっかりと写り込んでいるのです。高画素で高解像ならではの写りだと思います。
焦点距離:50mm、プログラムAE(絞りF4・1/40秒)、ISO400、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例17:窓ガラスの向こうで】焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF4・1/25秒)、ISO3200、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例17:窓ガラスの向こうで】
タングステン光の下で、窓ガラスの向こうにいる女性を70mm望遠域でスナップ。こちらも画素等倍まで拡大して見ると、ISO感度3200まで高感度に自動でアップされていても、後ろに束ねた髪の毛がみごとに1本1本がタングステン光の下で輝くように解像しているのがわかります。高感度でも荒れが目立たない高画素・高解像ならではの繊細な描写となりました。
焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF4・1/25秒)、ISO3200、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

【作例18:サルスベリの花】焦点距離:70mm(マクロ域)、MF、絞り優先AE(絞りF4・1/1600秒)、ISO2000、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例18:サルスベリの花】
サルスベリは、漢字で、百日紅か猿滑と書きます。猿滑とはそのものずばりの感じですが、サルが乗って滑ったかどうかはわかりません。その点において“百日紅”と書いてサルスベリと読ませるほうが、サルスベリの花をズバリ連想させるので、こちらの漢字のほうが好きです。でも、こんなこと書いていて山にいつも茂っていたサルスベリの樹は、初夏は緑の葉がきれいでしたが、夏には白い花を咲かせていました。あれもサルスベリと思っていましたが、白い花だと“百日白”とでも書くのでしょうか。それとも別の樹なのかもしれません。少し前置きが長くなりました。今回使ったEF24~70mmF4L IS USMは、ズームリングをスイッチとともに70mm側で回転させるとマクロモードに入ります。そのマクロモードで撮影を試みました。当初は、絞り込んで撮影と思いましたが、背景のボケを比較すると絞り開放のほうがボケ具合がいい感じでした。絞り開放であるためにシャープさはありませんが、こちらを掲載です。肉眼ではあまり気にならなかったアブラムシも複数写り込んでいます。ピントはAFも可能ですが、三脚にカメラをセットしたので、マニュアルでピント合わせをしました。
焦点距離:70mm(マクロ域)、MF撮影、絞り優先AE(絞りF4・1/1600秒)、ISO2000、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用。

【作例19:ウツギの花】焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF7.1・1/200秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)

【作例19:ウツギの花】
作例18がソフトフォーカス的な描写でしたから、同じレンズでもう少ししっかりと解像した描写を求めてみました。撮影は、プログラムAEのまま手持ちAFで行いましたが、このような微妙な撮影は、最初から感度を上げてAFでなくマニュアルで、しかも手持ちでなく三脚使用がやはり良いですね。ということで風も吹いていましたし、なかなかピントが定まらずに花芯にフォーカスは合っていません。それでも花弁の表面の細かい部分のみずみずしい描写は肉眼では認識できないほど細かく、素晴らしいです。つまり、高画素タイプのカメラであっても、レンズの解像力が不足すればソフトフォーカス的な描写となりますが、レンズの解像力がアップすれば高画素であることと相まって、肉眼でも確認できないような繊細な描写が可能になるというわけです。
焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF7.1・1/200秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。

■高画素と光学ローパスフィルター

以上がフルサイズで有効画素数5,060万の「キヤノンEOS 5Ds」を使った僕なりのレポートです。最初に悩んだのは、最高画素モデルとして、より鮮鋭度の高い光学ローパスフィルター効果をキャンセルしたEOS 5DsRにするかということでした。結局、少ない経験ではありますが、ここまで高画素になってくると最終画素(画素等倍)での画像(鮮鋭度)を活かすことは、さまざまな場面を想定してもほとんどないだろうということでした。そしてキヤノンのコメントからは、何となく不本意ながらEOS 5DsRを作りましたみたいな感じ(あくまでも僕がそう感じただけですけど)が伝わってきていましたので、EOS 5Dsを選んでみたのです。それまでは、光学ローパスフィルターがないと鮮鋭度の高い画像が得られる、光学ローパスフィルターがあるとモアレの発生が防げる、特に動画撮影ではモアレ防止の効果は大きい、などと考えていましたが、最近写真仲間の好意によって、B0判の特大プリントを頻繁に行うことができるようになり、画素等倍の鮮鋭度を生かすことは最終的な鑑賞形態ではきわめて少ないのではないかと思ったのです。つまり写真プリントとして、商業印刷として、同じ高画素(解像度)なら、トータルで写真を鑑賞(利用)するのに画素等倍レベルで鮮鋭度が高いことがどれだけ効果があるかと、考えたのです。
これには異論がある方もいるだろうと思いますが、そのようなことを思いめぐらしているときに、若手カメラマンのSK君に新宿のカメラ店でばったり会いました。SK君いわく、6月の発売と同時にEOS
5DsRを購入し、仕事に使ってきたけれど、光学ローパスフィルターがないことのメリットが見いだせないというのです。そこで、僕なりの考え方を伝えましたが、同じような考え方に行き着いたようです。とはいっても、カメラにはさまざまなユーザーなりの要求があるわけで、それだけのバリエーションは商品のラインナップとしては必要だったのかもしれません。
(2015.9)

キヤノンEOS 5Ds で「MJビューカメラアダプター」を使ってみました

【写真A】MJビューカメラアダプター69(画像をクリックすると大きくして見られます)
【写真B】ホースマンVH-RにMJビューカメラアダプター69を介してキヤノンEOS 5Dsを取り付け(画像をクリックすると大きくして見られます)
【写真C:フォクトレンダーAVOSの雄姿】トプコール150mmF4.5、絞り優先AE(F11・1/25秒)、+1EV補正、ISO 1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用(画像をクリックすると大きくして見られます)

キヤノンEOS 5Dsが高画素機であることから、メディアジョイの和田社長さんから「MJビューカメラアダプター69」を使ってみないかと提案をもらいました。ビューカメラアダプター69は、リンホフ、ホースマン、カンボなどの国際規格の69フィルムバックを備えたテクニカルビューカメラに35ミリ一眼レフなどを装着するためのアダプター【写真A】です。各種カメラマウントに対応しており、今回はキヤノンEFマウントで使ってみました。
テクニカルビューカメラとしては6×9cm判のホースマンVH-Rを用意して、MJビューカメラアダプターを介してEOS 5Dsを装着してみました【写真B】。最初は75mmレンズを取り付けましたが、接写でしかピントが合わないので、さらに焦点距離の長い150mmレンズを使って、撮影した結果が【写真C】です。もう少し焦点距離の短い100mmぐらいからのレンズも使用可能だと考えられますが、一眼レフはフランジバックが長いので、それだけ蛇腹の伸ばしが短くなるのです。マウント部に最もフルサイズでフランジバックの短いミラーレス機のソニーα7シリーズ用のFEマウントがあればさらに便利さが広がるかもしれません。
このようなビューカメラアダプターは、原理的にはフィルムカメラの時代から可能でしたが、レンズ交換式のデジタルカメラで、ライブビューで拡大して見ながらピント合わせができるようになった現在のほうが、用途が広がると思うのです。