ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)
第三十四回「シグマdp0クアトロを使ってみました」
1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)
■広角なのにレンズが長い
この種の非レンズ交換機には超広角レンズの搭載を望む声が一般的には多いのですが、もともとかなり形状的に個性豊かなdpクアトロシリーズボディに加え、dp0クアトロ【写真1~3】では独特な光学系を採用して超広角なのに焦点距離の長い望遠よりもレンズ部分が長いのです。そのあたりが、写りにどのように関係してくるのでしょうか。






まず、21mm相当画角といってもdpクアトロシリーズのフォビオンセンサーはAPS-C判なので、実際に搭載されているレンズは14mmF4となります。シグマによると、光学系としては8群11枚構成【図1】で、このうち2枚が非球面レンズ、4枚がFLD(Fluorite;蛍石なみの低分散)ガラス、SLD(Special Low Dispersion;特殊低分散)ガラスを2枚使うなど、かなり贅沢な組成です。しかしそれにしても、同じAPS-Cのイメージサイズなのになぜ、焦点距離75mm相当、45mm相当より広角の21mm相当のdp0クアトロのほうがレンズの全長が長いのでしょう。デジタルの時代になって新たに設計されるレンズはその傾向が強いようですが、フィルムカメラの時代にはライカ判フルサイズと画面サイズは大きくても、そのようなことはありませんでした。
35mmフィルムカメラの時代の21mmレンズ搭載のカメラで僕のお気に入りは、ライカに“スーパーアンギュロン21mmF4”【写真4】を取り付けたのと“リコーGR21”【写真5】でした。写真をご覧になっておわかりいただけるように、画面サイズの”大きいライカ判フルサイズなのにどちらもレンズの先端はボディからあまり出っ張っていないのです。つまりデジタルになるとこのようなフラットな光学系ではなくなるのです。これはシグマのコンパクト機であるdpクアトロシリーズだけのことではなく、レンズ交換式のライカやミラーレス機などでは共通した問題なのです。これは撮像素子とレンズに関連していて、つまりフィルムカメラの時代にはなかったデジタルカメラならではの独自な現象なのです。
簡単にその理由を説明しますと、撮像素子に入るレンズからの光線は平行で垂直に入るほうが効率よく、このような光学系をテレセントリック性が高いといいます。また撮影レンズ後端から撮像素子面が近いと画面周辺の光線は斜めに入ることになり、効率よく光線を受けることができないのです。そのような結果として、画面周辺の光量が極端に不足したり、周辺がマゼンタ色に偏色したり、さらに画面端の被写体に紫や緑色の輪郭が発生したりすることがあるのです。
それでは一眼レフカメラの広角はどうだろうかということになりますが、一眼レフカメラは構造的に光路中にメインミラーがあるためにレンズ最後部と撮像面の距離(メカニカルバック)を長くとらざるを得なかったためにメカニカルバックを長くとれるレトロフォーカス(逆望遠)タイプが当初から採用されていたのです。
だいぶ回りくどくなりましたが、デジタルでは広角とりわけ超広角になればなるほどこの種の問題は重要となってきます。またシグマdp0クアトロでは、超広角レンズとしては避けがたい倍率の色収差と歪曲収差を極力なくしたということでdp0(ゼロ)という名称がつけられたといわれていますが、デジタルの超広角専用機として十分な画質得るために上記のようなテレセントリック性の高い、つまり光束の直線性を大切にした光学的に長いレンズ構成を採用したというのです。

ちなみにdp0からdp3まで各機種のレンズ先端から撮像面までのおおよその寸法を測ってみると、dp0(14mmF4)=90.5mm、dp1(19mmF2.8)=52mm、dp2(30mmF2.8)=46.5mm、dp3(50mmF2.8)=67.5mmとなるのです。これでおわかりのように望遠のdp3より超広角dp0のほうが23mmも長いのです。いかにディストーションを極力少なくしてデジタル対応とさせるために特別に光学設計に配慮したかがよくわかります。【写真6】には、dpクアトロシリーズをラインナップしました。
■写してみたら
さて、実際はどうなのでしょう。以下に撮影した結果を紹介しましょう。
なお、撮影データ中にある“AWB(残し)”とは、dp0クアトロで初めて加わった機能で、その場の光源色をわずかに残したオートホワイトバランスということで、通常のAWBとは別に設定できます。

【作例1:英国大使館正面玄関】
長い梅雨の合間、まるで待ちかねたように発売日の7月10日にはみごと晴天となりました。お決まりの場所でのファーストショット。建物の上部壁面には英国の誇る“マクラーレンF-1”の看板が取り付けられていますが、ここ数年にはなかった光景です。ピントはいつもと同じように建物中央上部のエンブレムに合わせてあります。画像はフォビオンならでの高画質はいうまでもありませんが、大きく拡大する以前にモニター画面枠に合わせた状態で見ると、妙にすっきりとした印象です。たぶん、ディストーションのない描写が、そのように感じさせたのでしょう。
絞り優先AE(F5.6・1/800秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、三脚使用。


【作例2:赤い滑り台】
近所の千鳥ヶ淵公園を歩いていたら目にもまぶしいばかりの赤い滑り台を見つけました。太陽がギラギラと照りつけていましたが、ストレートに正面から狙ってみました。滑り台自体は合成樹脂でできているようで、外観的には光沢感をかなり感じさせますが、赤の部分の色はまずまず近い感じに再現されました。太陽光が照りつける反射部分が白く抜けてしまったのはあまりにも輝度差が大きすぎるために致し方ないだろうと考えましたが、画素等倍に拡大して見ると、白く抜けたハイライト部分の中に細かく滑り台表面のスリキズが見えます。
プログラムAE(F10・1/200秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例3:チャート的なマンション】
dp0を持ってぶらぶらと歩いていて見つけた細かいタイルが貼られたマンションは、格好のチャートとなります。平面ではありませんが、それぞれの壁面に貼られたタイルは画素等倍で見ても、クセもなく微細に再現されています。その画素等倍で、画面左端の白いビルの窓枠のエッジを見ると倍率の色収差によるであろうフリンジの発生をかすかに見ることができますが、この程度の発生なら焦点距離のわりにはかなりよく補正されているレベルだろうと思うのです。なお、フリンジは被写体との兼ね合いで発生してくるもので、白いビルならではの現象であると思うのです。また、撮影時にRAWデータで撮影していれば、ソフト的に目立たなくすることもできますが、画素等倍というプリントサイズは畳1枚を楽に超える大きさなので、非現実的であり、実用上はまったく無視してよいレベルです。
プログラムAE(F10・1/200秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。

【作例4:公園の注意書き】
千鳥ヶ淵公園を歩いていたら、時節柄いかにもという注意書き看板を見つけ、珍しさだけでシャッターを押したので、写真内容としては特におもしろくはありません。しかし撮影直後背面液晶モニターの画像を見てびっくりしました。まったく超広角21mm画角で撮影したことを感じさせないのです。その原因をいろいろと考えてみましたが、近接でもディストーションが極端に少ないとこのように見えるのだろうと考えました。
プログラムAE(F6.3・1/50秒)、+0.7EV補正、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

【作例5:都心の日没】
夕方、半蔵門を歩いていたら、日没直前に遠くのビルの壁面に太陽があたり鏡のように輝いていました。ノーマルに露出を与えたら、反射部分が白く抜けてしまうだけでおもしろくありませんので、ビルの輪郭と一部壁面が見える程度に適度なマイナスの露出補正を加えてみましたが、輝度差があまりにも大きく、これ以上の補正を加えると周辺の画像が単順に暗くなり内容の認識ができなくなるので、-2.7EV、このあたりがギリギリな補正かなと思ったところで止めてみました。目視では十分な明るさなのですが、このカットからはさまざまなことが見えてきます。シャドー部になりますが、左側のバス停の文字を見るとわかるのですが、画素等倍でも崩れることのない高解像性、直線部はディストーションをほとんど感じさせないのです。また、シャドー部全体ではノイズの発生を感じさせますが、特にノイズキャンセル処理を行っていませんので致し方ないかもしれませんが、シャープさなどの関係から個人的にはこの方が好きな描写です。
なお、左側の車列の車は、テイルランプがついているようにも見えますが、実はその先の信号が赤に変わり、皆ブレーキを踏んだので、ブレーキランプが点灯しているのですが、その光芒もほとんど真円に近いのでクセのない描写であることがわかります。
プログラムAE(F7.1・1/100秒)、-2.7EV補正、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。

【作例6:ねむの木の花】
湖にそそぐ川面の上にねむの木の花が咲いていたのでシャッターを切りました。ねむの木の花は白と先がピンクの細い針のような花弁の集合体ですが、このカットも結果としてはdpクアトロの中距離における解像力の高さを確認するためのチャートのようなものでした。いずれにしても解像力は必要以上に十分であることはおわかりいただけたと思います。大分県湯布院金鱗湖にて。
プログラムAE(F8・1/125秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。


【作例7:青空と樹木】
このような遠景シーンを撮影するのは木々の葉がどれだけ解像するかを見るためですが、今さらこのdpクアトロシリーズが高解像であることを調べてどうするのかという気もしましたが、念のためとシャッターを切ったのですが、モニター上で画素等倍にして驚きました。画面中央下にある建物に書かれているCALLという文字が明確に見えるのです。さらに周辺には電柱と電線が見えるのですが、画素等倍の画像とは思えないほどシャープなのです。dpクアトロシリーズはさまざまな焦点距離で今までも数多く撮影してきましたが、高解像感に対して新たな発見でありました。湯布院金鱗湖にて。
プログラムAE(F10・1/200秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例8:真夏のもみじ】
青空を背景に少し紅く色づいた真夏のもみじが光を透してステンドグラスのように輝いていました。ごく自然にシャッターを切りましたが、実はこういうシーンはデジタルの広角レンズにはつらいのです。一般的にはこのような場面では、画面上部周辺部に紫色のパープルフリンジが発生することが多いのですが、このシーンではまったくといっていいほどフリンジの発生は確認できません。【作例3】の遠景マンションでは確認できたのにこちらのカットでは見えないのです。撮影距離が中距離ということがあるかもしれませんが、パープルフリンジはレンズの特性だけで発生するのではなく、被写体の状況によっても発生したり、発生しなかったりするわけです。
だからといって、撮影画像の左右に色の濃いビルなどを配してフリンジの発生がないような作例をつくることも撮影テクニックとしてはありますが、カメラ、レンズの性能を本当に知りたい人にとっては残念なことです。少なくともdp0クアトロと搭載された14mmF4レンズは、かなりフリンジの発生は少ない組み合わせだと思うので、もっと正面から堂々と描写特性を見せてもよいのではと考える次第です。湯布院金鱗湖にて。
プログラムAE(F10・1/200秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。

【作例9:U字溝の植物】
湯布院の湯平温泉街の石畳道を歩いていて、U字溝の中に密集してたくましく生きる植物を見つけ、十分に近づいて撮影した1枚です。たぶん蓋の部分から少しでも顔を出すと踏みつけられて、それ以上伸びることはできないのでしょう。マクロ域での撮影ですが、植物の繊毛まで見えるシャープさ、黒くさびた鉄の蓋の質感、そして近接でもディストーションを感じさせない直線性など、このカットもdp0クアトロならではのものです。
プログラムAE(F9・1/125秒)、ISO100、AWB、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。







【作例10:札幌に遊ぶ田中長徳さん】
基本的にフォビオンセンサーは、性能を十分に発揮するには明るいところで撮影するものだといつも僕は思っています。そのようななかでも、ときには必要に迫られて室内で補助光なしで撮影することがあります。この写真は、札幌の喫茶店で写真家の田中長徳さんとご一緒した時のものです。手持ち1/30秒はブレないシャッタースピードとしてぎりぎり、感度オートでISO400とこちらもノイズの発生具合やプリント時の拡大率からすると、ぎりぎりかなと思うのです。それでも必要十分なシャープさと彩度があるのはご理解いただけると思うのです。いずれにしても高解像と高感度が両立しないのはフィルムの時代にはあたりまえのことでしたから、いまさら驚くわけでもないのですが、これが両立するようになったらフォビオンは最強のイメージャーになるのです。
プログラムAE(F4.5・1/30秒)、ISO400、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例11:札幌テレビ塔】
せっかく札幌までdp0クアトロを持参したのですからと名物の建造物をということで、晴天ではありませんでしたが撮影した1枚です。ピントはAFで右下の赤い小屋にフォーカスロックして合わせましたが、14mmという焦点距離では背後のテレビ塔まで十分にピントがきています。
このカットで感心したのは、テレビ塔中間の緑色に塗装された展望デッキ部分の表面の質感です。単に色が塗られた感じでべったりというわけではなく、しっかりと壁面が波打った感じなどが描出されていることです。これも高解像なフォビオンならではのものと思うのです。
プログラムAE(F7.1・1/80秒)、+1EV補正、ISO100、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例12:不思議な空間】
静岡県駿東郡にあるクレマチスの丘の美術館をつなぐ通路です。最初は遠くから見ていたのですが、タイル張りの壁画の前を人が歩いて行くのです。背景に描かれた2人は不動なのですが、そこを女性が歩いて行くところをねらいました。最初は、歩いてどこに行くのかわかりませんでしたが、チケット売り場から美術館の入り口までの通路だったのです。どおりで、すべての人が左から右に歩いて行くわけで、出口はほかにあり、1方通行であるとわかったのは、チケット売り場まで確認に行った後でした。なお、タイルは1つ、1つ細かく描出されています。
プログラムAE(F9・1/125秒)、ISO100、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例13:寫眞週報】
クレマチスの丘にあるIZU PHOTO MUSEUMの“戦争と平和-伝えたかった日本”展で壁面いっぱいに展示された『寫眞週報』。周辺部が暗いのは、照明が撮影用でなく中央部に自然光がたくさんあたるような展示であったことと、撮影レンズがF4の絞り開放であったためです。寫眞週報とは、戦前内閣情報局により刊行された週刊のグラフプロパガンダ誌で、1938年2月16日付の創刊号から、1945年7月11日付の374・375合併号までに全部で370冊発行されました。それにしても、画素等倍に伸ばすとそれぞれのメインタイトルや副題が十分に読めるのは、まるでマクロレンズの描写を見ているようです。
プログラムAE(F4・1/25秒)、ISO200、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例14:岩科学校】
岩科学校は、伊豆松崎町にあるなまこ壁の社寺風建築様式と洋風のバルコニーを取り入れ、1880年に建てられた伊豆地区最も古い小学校です。瓦文字の解像、質感描写などなかなかですが、左手前の松葉が1本1本しっかりと描写しているのもご立派です。
プログラムAE(F8/・1/100秒)、ISO100、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例15:なまこ壁の倉】
伊豆松崎町のなまこ壁通りです。なまこ壁の倉の窓をアップしてみました。歪みのないのはdp0ならではのものですが、中央の柱を囲った鉄板の錆び、銅板の緑錆、クラシックな窓ガラス、引き戸など、いずれも繊細な古さを感じさせる描写となりました。なまこ壁とは、土蔵などの外壁面に四角い平瓦を並べて貼り、メジとして漆喰をかまぼこ型に盛り上げて塗っあるものをいいます。明治時代から昭和中期までは各地で見られましたが、現在は少なくなりました。前出の岩科学校もなまこ壁です。
プログラムAE(F7.1・1/100秒)、ISO100、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
【作例16:奈良俣ダム】
群馬県の利根川水系上流にある日本最大のロックヒルダムを下から見上げてみました。ロックヒルダムとは、石を積み上げてダムを作るのだということですが、地盤のあまりよくないところで用いられる工法だそうです。
この写真はF13まで絞り込まれていますが、画素等倍まで拡大てみると、手前の石にはピントがよくきているのですが、奥の石にはピントがきていないのです。つまり絞り込むと、パンフォーカス的に遠方までピントが合うというのが一般的ですが、デジタルでは簡単に画素等倍まで拡大してみたり、B0判クラスまで拡大プリントして見られるので、フィルムカメラの時代と被写界深度の考え方を変えなくてはならないと最近思うようになりました。画面中央左上空にはトンボが飛んでいます。いずれにしても、誰もが合焦ポイントの違いがわかるところまで拡大プリントする必要があるのか? ということになります。
なおこのような短い焦点距離のレンズでピントが浅く見える現象は、フォクトレンダー・スーパーワイドヘリアー15mmF4(第29回掲載)でも確認されています。撮像素子がフィルムのように厚みをもっていないデジタルならではの現象であると考えます。
プログラムAE(F13・1/200秒)、-0.3EV補正、ISO100、AWB(色残し)、Jpeg.Fine(5424×3616)、手持ち撮影。
■超広角を感じさせない超広角レンズ
dp0クアトロのレポートがやっと終わりました。いつもよりたくさんの場所に持参した結果、作例が16点と1機種に対しては過去最高のものになりました。これは、前に報告したレンズが手こずったためと、dp0では必要以上に21mm超広角という画角を意識したために、まだまだ答えがでないと持ち歩いた結果なのです。しかし多数撮影してみてわかったことは、dp0クアトロにおける21mm相当画角とは、むしろ超広角であるという意識を捨てて、単に近距離で幅広く写るレンズと考えた方がよかったようです。
どうしてそのような結果になったかというと、写った結果はディストーションがなくパースペクティブがどうとかいうのではなく、あくまでも見た目がきわめて自然なためなのです。換言すると、従来の超広角レンズの写り方を変えたカメラ(レンズ)だということです。またディストーションがまったくないという印象を持った過去のレンズとしてはライカ用の「スーパーアンギュロン21mmF4」があります。こちらは35mmのフルサイズなのですが、さらに中心から周辺への光量低下がなだらかで気持ちがいいというものでした【作例17】。シグマのdp0クアトロの自然な描出は、単にディストーションだけからでてくるのか、14mmという焦点距離も関係するのか、他の21mm画角のレンズと比較考察してみるのもおもしろいと思うのです。


dpクアトロシリーズ全体を概観して感じたことは、フォビオンならではの垂直記録のすごさを再認識したことです。そして使用にあたってこのカメラでは“dpクアトロを使うぞ!”という意識をもって撮影に臨まなくてはならないということでした。それは、最初にdpクアトロをレポートした時にも書きましたが、機種的には単焦点のコンパクトデジタルカメラに分類されていても、大きさはフィルムカメラの中判なみ、画質はそれ以上というわけです。それに、途中から追加発売されたシステムアクセサリーの「LCDビューファインダー」を取り付けると、さらに大きくなります【写真3】。この状態で、dp0~dp3+90mmテレコンバーターの全システムを加えると、ちょっとした容積・重量で、持ち歩きにはキャスター付きの小型旅行カバンぐらいのものが必要となるのです。それだけに自分好みの焦点距離(画角)はどれかとか、その日の被写体は何なのかなど、事前に決めて、持ち歩く(購入する)機種を選択することも大切な要素(決断)です。
それと性能面で特筆されるのは、以前の機種であるdpメリルシリーズでは電池の消耗早く、簡単な撮影でも、1日のうちに予備を含めて少なくとも2本を必要としたのですが、今回のdpクアトロシリーズでは、電池容量が半分ぐらいに減ってからでも、かなり頑張るのです。結果として、2日ぐらいの撮影でも交換なしでいけたことが何回かありました。これは素晴らしい進歩だと思います。そしてさらなる進歩は、かつてのカメラがそうであったように、レンズ交換式となるのか、それともズームレンズ組み込みとなるのか、などと考えるのも楽しいことです。
最後に、僕が関係する札幌の"IMAI Collection"には、dp0、dp1、dp2、dp3、90mmテレコンバーター、光学ファインダー、LCDビューファインダー、専用ストロボ、専用ケーブルレリーズ、専用光学フィルターなどの全システムが収蔵れています【写真7】。これは高画質ならではが、オーナー今井貞男さんのおメガネにかない全システムの収集となった理由なのです。
(2015.8)
