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ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)

第十九回「フルサイズ高画素機ニコンD800Eとソニーα7R」

コーナー名
ライカに始まりライカに終わる
著者
市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)
対象機材・テーマ
フルサイズ高画素機ニコンD800Eとソニーα7R
概要・導入
写真1 フルサイズ高画素機のニコンD800Eとソニーα7R(画像をクリックすると大きく見られます) 最初に、ここはライカに関して話題を提供する場と思われているかもしれませんが、前回あたりから多少その枠を広め、他社でも話題性のあるテーマも追いかけていこうとしています。とはいっても、今回はまったくライカとは関係ないわけでもありません。とくに「ソニーα7R」は初めてのフルサイズミラーレス機ですが、その魅力はフランジバックが一眼レフより極端に短いために、マウントアダプターを介せば、レンジファインダーライカのレンズとライカフレックスRレンズを含む各社一眼レフの交換レンズも装着でき撮影可能なのです。実際こ…

1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

写真1 フルサイズ高画素機のニコンD800Eとソニーα7R(画像をクリックすると大きく見られます)

最初に、ここはライカに関して話題を提供する場と思われているかもしれませんが、前回あたりから多少その枠を広め、他社でも話題性のあるテーマも追いかけていこうとしています。とはいっても、今回はまったくライカとは関係ないわけでもありません。とくに「ソニーα7R」は初めてのフルサイズミラーレス機ですが、その魅力はフランジバックが一眼レフより極端に短いために、マウントアダプターを介せば、レンジファインダーライカのレンズとライカフレックスRレンズを含む各社一眼レフの交換レンズも装着でき撮影可能なのです。実際この時期、α7Rの購入者は専用交換レンズ(FEマウント)の購入者はかなり少ないようですが、これはレンズマウントアダプターでオールドレンズ遊びをフルサイズで楽しもうとする人が多いということだと考えられます。
撮影場面について解説しましょう。いつもは英国大使館の正面玄関を正対して撮影していますが、今回は少し場所を変えて地方へ出て2場面撮影することにしました。1カットは、茨城県の土浦城の太鼓門を正面から、さらにもう1カットは霞ヶ浦の湖岸に生えるヨシを写しました。土浦城太鼓門は有限の距離で12mぐらい先を、湖岸のヨシはほぼ無限遠となる30mぐらい先を狙いました。さらに太鼓門は絞りF5.6で、ヨシの群生は絞りF8に設定し、同じ三脚でボディを固定し、それぞれカメラを差し替えての撮影となりました。

●土浦城の太鼓門
■ニコンD800E+AFニッコール35mmF2D【写真2、作例A】
写真2 ニコンD800E+AFニッコール35mmF2D(画像をクリックすると大きく見られます)

作例A 絞り優先AE(F5.6・1/1000秒)、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見られます)

〈撮影データ〉絞り優先AE(F5.6・1/1000秒)、ISO100、AWB、三脚使用
撮影は、D800Eの性能を十分に発揮するようにと、三脚にカメラをセットしたのちに、ライブビューのAFで撮影することにしました。これはニコンのHPでもお勧めしているD800とD800Eの撮影法で、このように微妙な結果を求めるには大切なことです。AFターゲットは、画面中央に位置する瓦の縁に定め、同じアングル、同じ条件で約6カットぐらい撮影して、モニター上で最もシャープなコマを選び出しています。なお、このレンズは以前英国大使館を撮影したときに用いたものです。撮影にあたって、画質を決める要素としては画素数に加えレンズも大切であるわけで、ニコンD800Eの性能を満足させるものとしてGタイプレンズの使用を推奨しています。そこで、手元にあったGタイプの35mmの焦点距離を含むニッコールレンズを調べると、AF-S Nikkor24~70mmF2.8G EDがあるのですが、過去の英国大使館での実写やさまざまなフィールド撮影での結果からAFニッコール35mmF2Dのほうが解像度は高いような感じがしたのです。これは単焦点とズームレンズの関係からで、単焦点のほうがよいと以前から思っていたわけで、3,630万画素という高解像度で初めて見えてくる現象だと考えられます。このほか、手元には、MFでAiのニッコール35mmF2、やはりMFで非Aiのニッコール35mmF2.8があります。このうちF2.8はF値が今回比較したソニーのゾナーと同じなので、ベストな組み合わせかと考えましたが、時代的に少し古すぎるので避けました。いずれにしても、手元にGタイプのニッコール35mm単焦点レンズがあればいいのですが、高解像度カメラにはズームレンズは手元にあるレンズ群では避けたほうがいいような気がしたので、このようなセレクションとなりました。

■ソニーα7R+カール・ツァイスゾナーT* FE35mmF2.8ZA【写真3、作例B】
写真3 ソニーα7R+カール・ツァイスゾナーT* FE35mmF2.8ZA(画像をクリックすると大きく見られます)

作例B 絞り優先AE(F5.6・1/1000秒)、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見られます)

〈撮影データ〉絞り優先AE(F5.6・1/1000秒)、ISO100、AWB、三脚使用
撮影に使ったレンズは、α7Rと同時に発売になった単焦点のゾナー35mmF2.8レンズで、α7Rボディのキットレンズとして購入しました。同時に発売になった2,430万画素のα7にはズームのキットレンズFE28~70mmF3.5~5.6 OSSが用意されていますが、高解像度機α7Rにはズームレンズ付のキットはありません(発売時)。これはどうしてか思うのですが、ニコンの項で述べたように、高画素機にズームレンズはマッチングしないようです。また、α7Rは3,640万画素、α7は2,430万画素とまず画素数の違いが目につきますが、このほかにα7Rは光学ローパスフィルターレスで、α7は光学ローパスフィルターがありです。このほか連写速度は、ソニーα7Rは1.5コマ/秒、α7は2.5コマ/秒です。ちなみにニコンD800Eは4コマ/秒だというわけですが。高画素機はデータ転送に時間がかかるためか秒間コマ数は少ないようですが、それぞれは作る側の設計思想の違いでしょう。さて撮影は、絞り優先AEで、合焦フレームを画面中央に位置する瓦の縁に定め複数枚シャッターを切りました。

2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

■太鼓門を写した結果から

まず、ニコンとソニーの画面を見比べて思うのは、ニコンはコントラストが高く、全体的にアンダーな感じに写っています。それでは露出値が違うのかと、それぞれのExif Dataを見ると、ISO100と同じ感度設定で、絞り値F5.6、シャッター速度1/1000秒ともまったく同じで、撮影条件としては大きな違いはないだろうと思うのです。また、シャドーの描出はソニーのほうがよく表れていて、ニコンのほうがアンダー気味の感じがしますが、これはこれであり、それぞれのメーカーの画作りの設計思想の違いと見るわけでありまして、どちらがいいかということでなく、どちらが好きかということになります。また白壁のハイライト部分は、どちらも完全に飛んでいるわけではないですが、ニコンのほうがRGB成分はバランスよくハイライト部が形成されています。さて解像感に関しては、ピントを合わせた瓦の縁や左側の松の葉を見るとツァイスゾナーのほうがシャープです。これをさらに細かく見ていくと、ニコンは瓦中心部から左右に広がる部分を順次追いかけて見てみると、周辺に行くにしたがって結像が甘くなります。絞りはF5.6に絞ってありますが、これはたぶん像面湾曲の影響ではないかと思われます。
ただし、これらはあくまでもパソコンのモニター画面上で画素等倍に拡大したときの画像であって、僕の手元にあるインクジェットプリンターでA3ノビ(半切相当)にプリントしたときには、瓦の縁はソニーのほうが明らかにシャープであることはわかりますが、松の葉の部分は発色の傾向は別にしてどちらも同じような見え方にプリントされます。いずれにしましても、ソニーは最新のレンズ、ニコンは最新Gタイプレンズではなく、一世代前のDタイプレンズを使ったのが原因かもしれません。

●霞ヶ浦の湖岸に生えるヨシ
■ニコンD800E+AFニッコール35mmF2D【作例C】

作例C 絞り優先AE(F8・1/200秒)、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見られます)

作例D 絞り優先AE(F8・1/250秒)、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見られます)

〈撮影データ〉絞り優先AE(F8・1/200秒)、ISO100、AWB、三脚使用
撮影は、太鼓門と同様にD800Eの性能を十分に発揮するようにと、三脚にカメラをセットしたのちに、ライブビューのAFで撮影しました。ただし前カットと異なり絞り値をF8にセットしました。ピントを合わせたフォーカスポイントは、ヨシのわずか手前に位置する木道の縁です。全体のアングルとしては、この木道に正対した位置から撮影してあります。

■ソニーα7R+カール・ツァイスゾナーT* FE35mmF2.8ZA【作例D】

〈撮影データ〉絞り優先AE(F8・1/250秒)、ISO100、AWB、三脚使用
撮影条件、撮影ターゲットはD800Eとまったく同様です。どちらのカメラもそうですが、注意深く6カット撮影しました内の1枚です。

■ヨシを写した結果から

まず、ご覧になっておわかりのように、太鼓門のように濃度差は大きくありません。測光分布などに依存するのでしょうか、シャッタースピードはソニーのほうが1/250秒とニコンより1/50秒速いのですが、この違いは特に意味はないと思うのです。実際の写した結果を見てみましょう。モニター画面で画素等倍に伸ばした場合の解像感に関しては、太鼓門のときと同様にやはりツァイスゾナーのほうがシャープです。その原因は前カット同様に、ソニーのは最新レンズ、ニコンはGタイプレンズではなく、一世代前のDタイプレンズを使ったからかもしれません。ひょっとしたら、当日は風が強かったので、先ほどの1/50秒速いシャッターがヨシの揺らぎを止めたのかなとも考えましたが、それでは完全に固定された木道部分の描写が説明つきません。ただし、先ほどの太鼓門のように像面湾曲による影響があるのではというような懸念は消えました。これは撮影距離と、絞りがF8に絞り込まれたことに関係あると考えられます。

●終わりに

以上は、あくまでもパソコンのモニター画面で画素等倍に伸ばした場合の画質でありまして、先ほどの太鼓門のシーンと同じようにヨシの群生をインクジェットプリンターでA3ノビ(半切相当)にプリントした限りでは、ニコンとソニーの差はまったくわからなくなるのです。むしろ見方によってはニコンのほうが背景まで解像感があるようにも見えるのです。難しい結果です。
結局ここまでくると、ボディを見ていたのか、レンズを見ていたのかなかなか判断できません。特殊な場面での測光値や再現色などを別にすれば、同じ画素数(同じ撮像素子)なら、撮影レンズの違いのほうが、画質に与える影響は大きいのではないだろうか、というのが今回の僕の印象です。もちろんそのレンズというのは、ピント精度、ブレなども含んでのことでありまして、今回はそのような不確定要素を排除するために、同じ撮影場所で、同じ三脚使用、同じ絞り値、同じISO感度、複数回撮影してベストを比較検討用としたのです。
僕の知人のD800Eの使い手Nさんによると、デジタルなのだから撮影感度を上げて、シャッタースピードを1/4000秒以上の高速で切ればブレはなく、きれいに撮れるというのですが、今回の撮影にはそれは当てはまらないわけです。また、厳密にニコンとソニーのボディの差を写りで知りたいときは、ニコンD800Eで使ったレンズを、マウントアダプターを介してソニーα7Rで使ってみればいいのですが、僕はここまでで終わりにします。
今回の比較をさらに知りたい方は、ご自身で各データをダウンロードして少なくともA3ノビクラスにプリントして見比べてください。ただ、この場合個人での利用には問題ありませんが、業務での無断使用はお断りいたします。 (2013.12)