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ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)

第十七回「フォトキナ2012新製品の「ライカS」を使ってみた」

コーナー名
ライカに始まりライカに終わる
著者
市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)
対象機材・テーマ
フォトキナ2012新製品の「ライカS
概要・導入
2012年のフォトキナで、最も元気だった企業は1号館すべてを借り切った地元ライカ・カメラ社だった。 まず新製品だが、カメラだけでも複数あり、最大の注目新製品は「ライカM」である。距離計連動、ライカ判フルサイズ2,400万画素のCMOS撮像素子、ライブビュー、HD動画撮影可能などが基本的な特長である。ライブビューが可能になったことにより距離計連動機の交換レンズの最長焦点距離135mmという制約が外れ、別売のマウントアダプターを取り付ければ、過去に発売された一眼レフのライカフレックス用Rマウントレンズのほとんどが使用できる。昨今、一部マニアは、ミラーレス機で、マウントアダプターを交換するによりクラ…

1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)

【写真1】「ライカS」(写真をクリックすると拡大されます)
【写真2】ニック・ウット氏とキム・フックさん、2012年フォトキナにて(写真をクリックすると拡大されます)

2012年のフォトキナで、最も元気だった企業は1号館すべてを借り切った地元ライカ・カメラ社だった。
まず新製品だが、カメラだけでも複数あり、最大の注目新製品は「ライカM」である。距離計連動、ライカ判フルサイズ2,400万画素のCMOS撮像素子、ライブビュー、HD動画撮影可能などが基本的な特長である。ライブビューが可能になったことにより距離計連動機の交換レンズの最長焦点距離135mmという制約が外れ、別売のマウントアダプターを取り付ければ、過去に発売された一眼レフのライカフレックス用Rマウントレンズのほとんどが使用できる。昨今、一部マニアは、ミラーレス機で、マウントアダプターを交換するによりクラシックレンズ遊びを楽しんでいるが、いずれもAPS-C判であったのが、ライカ判フルサイズで楽しめるようになったことになる。
このほか、従来からのCCD撮像素子のライカM9からファインダー切り替えレバー、USB端子を省略し、上下カバーをダークなハンマートーン仕上げにして普及タイプとした「ライカM-E」、中判のS2をライカMと操作系を同じようになるよう80カ所変更したという「ライカS」【写真1】、ライカX2にイギリス人デザイナーのポール・スミスが配色を施した「ライカX2 Paul Smith Edition」、ライカX2を上・底蓋とレザーのカラーを選べる「ライカXアラカルト」、24~90mm相当画角のズームコンパクト「ライカD-Lux6」、25~600mm相当画角レンズ非交換一眼スタイルの「ライカV-Lux6」などと多彩だ。しかし、これら新製品をもってしても5,000平米あるというホール1すべてを埋められない。それで2,000平米を新製品とショー展示に、3,000平米をライカでの作品の展示にとスペースに分けていた。
この写真展示は世界各国の写真家の作品が飾られたが、特に“ライカホールの栄誉”としてピューリッツア賞受賞フォトジャーナリストのニック・ウット氏とホルストFASS氏がたたえられた。
ニック・ウット氏は、米国ロサンゼルス在住でベトナム戦争当時AP通信サイゴン支局の報道写真家だったが、ナパーム弾の爆撃から逃れる村人たちを撮影した「戦争の恐怖」と題した作品が、1973年にピューリッツァー賞を受賞している。発表会には、当時6歳で撮影された少女キム・フックさんもカナダから駆けつけニック・ウット氏と共に会場に現れた【写真2】。このあたりは、カメラが写真を撮る道具であり、その写真がそれぞれの時代というか、歴史をしっかりと記録してきたということを巧みに演出しているわけだ。日本人写真家としては荒木経惟氏の作品が展示された。
これらの新製品のうち「ライカM-E」と「ライカX2 Paul Smith Edition」はすでに発売が開始されているが、「ライカM」と「ライカS」はこれからの発売である。そのようななかニューモデル「ライカS」の発売前のβ機を使う機会があったので、簡単にその試用結果を報告しよう。また、その時に「ライカMモノクローム」と「アポ・ズミクロン50mmF2 ASPH.」も提供されたので、モノクロのモデル撮影にチャレンジしてみた。
以下、それぞれの写真をお見せしよう。

2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント

【写真3】β機(Leica S Type6)と左:バリオエルマーS30~90mm F3.5-5.6、右:スーパーエルマーS24mmF3.5(写真をクリックすると拡大されます)
【写真4】バリオエルマーS30~90mm F3.5-5.6 ASPH. (写真をクリックすると拡大されます)

今回2012年フォトキナで発表されたライカS用の新レンズは、ライカVario-Elmar-S 30~90mmF3.5-5.6 ASPH.、ライカ Super-Elmar-S 24 mmF3.5 ASPH. super-wide、ライカTS-APO-Elmar-S120mmF5.6 ASPH. tilt/shift lensの3本だった。現場にはこの3本があったが、簡単に写せることからバリオエルマー30~90mm F3.5-5.6とスーパーエルマーS24mmF3.5の2本を使ってみた。
ボディはβ機(Leica S Type6)だということで、AFは使えなく、露出もマニュアルで行った。【写真3】に示すように、左がバリオエルマーS30~90mm F3.5-5.6であり、右がスーパーエルマーS24mmF3.5である。
【写真4/バリオエルマーS30~90mm F3.5-5.6】撮影焦点距離:90mm、絞り:F9、シャッター速度:1/125秒、ISO感度100、大型ストロボ1灯使用。焦点距離30~90mmはライカSの場合は、35mmフルサイズよりも約60%大きい45×30mmのCCDでが使用され、35mm判換算で約26~79mm相当の画角になる。ピント合わせはマニュアルであるので、最望遠側の90mmに設定し、バランスのいいところまで接近しピントをわずかに前後させて3枚ほどシャッターを切ったうちの1枚である。クリックして画素等倍まで拡大してみると、十分シャープであることがわかる。中判デジタルカメラの実力といったところだろう。撮影後の画像データは、7,488×4,976ピクセルで、3,750万画素となる。
【写真5/スーパーエルマーS24mmF3.5】撮影焦点距離:24mm、絞り:F9、シャッター速度:1/125秒、ISO感度100、大型ストロボ1灯使用。焦点距離24mmはライカSの場合は、35mm判換算で21mm相当の画角になる。21mm相当の画角でクローズアップはないだろうということで、全身を撮影することにしたが、十分なワークスペースがないためにご覧のようになってしまった。撮影場所の関係もあり、十分な明るさが確保されていなかったので、ピント合わせに自信がなく、おおよその見当でえいっとばかりに3枚ほどシャッターを切ったが、残念ながら顔というか目にピントを合わせることができなかった。それでもまったくの的外れではなく、モデルさんの右手あたりと、その左右の衣服にピントがきている。よく拡大すると、その衣服のピントが合ったところはモアレが発生している。だからといって、ことさら問題にすることではなく、どのような寸法で使うかなどにもよるが、ソフト的にもモアレ除去は可能なはずだ。

【写真5】スーパーエルマーS24mmF3.5 ASPH. super-wide(写真をクリックすると拡大されます)
【写真6】ライカMモノクローム+Apoズミクロン50mmF2 ASPH. (写真をクリックすると拡大されます)
■終わりに

ライカSの前身「ライカS2」に関しては、2009年にやはり発売前に使用して“第二回「LEICA S2を使ってみた」”として掲載してある。こちらもぜひご覧いただきたい。なお、この時期から、ライカSには、ハッセルブラッドH、ハッセルブラッドV、ペンタックス6×7、マミヤ645のレンズが使えるようになるマウントアダプターが純正アクセサリーとして用意されるのも新しい動きだ。
またライカカメラ社は、今後カメラのネーミングに番号を振らないということを発表している。だから、ライカS2→ライカS、ライカM9→ライカMだそうだ。そのあとの新製品はどのような呼び方になるのだろうか、興味は尽きない。

【写真6/ライカMモノクローム+APOズミクロン50mmF2 ASPH.】絞り優先AE(F2.8・1/90秒)、ISO感度640。まったくおまけの画像である。“第十五回「ライカMモノクローム」の画質をチェック”の項を再度ご覧いただき、こちらと見比べてほしい。混雑した場所であったので、ピントの確度を増すために絞りは1絞りだけ絞っての撮影となった。右のモデルさんをご覧いただくとわかるが、1,800万画素ライカ判フルサイズ(36×24mm)なのに3,750万画素中判45×30mmのCCDの実力に勝るとも劣らない解像感をもっている。すごいパワーだ。さらに左のモデルさんの腕から肩のあたりを拡大してみていただきたい。顔や目に対してピントは合っていないが、右のモデルさんの目と同じ距離にある肩の薄毛や髪の毛の解像感は出色である。恐ろしいレンズでありカメラだ。