ライカに始まりライカに終わる · 連載コラム(市川泰憲)
第十四回「ミラーレスでライカレンズを使う」
1. 歴史・機構・蘊蓄(エッセイ・解説)
今回取り上げたのはAPS-C判ミラーレス機の「リコーGXR+A12Mount」、「ソニーNEX-7」、「フジフイルムX-Pro1」の3機種。それぞれ共通していることはミラーレス機であり、加えてライカMレンズを取り付けることができることだ。とはいっても、実はそれぞれはまったくコンセプトが違うカメラでもある。
●リコー・ソニー・フジのそれぞれ
まず「リコーGXR+A12Mount」、このカメラはそもそも撮像板を含んだカメラユニット交換式だが、従来はコンパクト機相当やAPS-C機のユニットであったのを、“A12Mount”という撮像板を含んだライカMマウントとしたことだ。これにカメラ本体のGXRを組み合わせて使うわけだが、特定の交換レンズは用意されていなく、ライカのMマウントレンズやレンズマウントアダプターを使いライカスクリューや各社一眼レフなどの交換レンズも取り付けて使うことができる。
続いて「ソニーNEX-7」、こちらはとくにライカマウントを意識したシステムではなく、NEXシリーズ専用のαE交換レンズには単焦点、ズーム、コンバージョンなどとたくさんそろえられている。NEX-7では「E18-55mm F3.5-5.6 OSS」(35mm判27~82.5mm相当)がセット販売されてる。NEX-7でライカレンズを使うためには、マウントアダプターを必要とするわけだが、ソニーからは販売されていなく、サードパーティーのものを使うことになる。このマウントアダプターは、国内外を含めてNEX用が最も多く、ライカ用を始めとして130種類以上あるとされている。
「フジフイルムX-Pro1」は、最後発で独自マウントを採用しているが、最もライカシステムを意識したものだ。新規のXマウントを採用し、XF18mmF2R、XF35mmF1.4R、XF60mmF2.4R Macroと3本の交換レンズが用意されている。つまり35mm判フルサイズで、27mm、53mm、91mm相当のズームでない単焦点レンズであるところがライカ的であるわけだ。このカメラのユニークなのは“ハイブリッドマルチビューファインダー”と呼ばれる機構を搭載し、光学ファインダーと電子ファインダーを切り替え使用できる。さらにもうひとつライカを意識したシステムであることはフジフイルム純正の“ライカMマウントアダプター”を用意していることだ。
以上が、各機種の特長だが、その概略と撮影結果に関係してくるだろうと考えられる仕様を表にまとめてた。まず発売時期、これは時期によりスペックの向上があるのではないだろうかとのことで載せてある。たとえば、リコーのGXRカメラ本体は2009年12月で、EVFの発売も同時期となりドット数も少なく、A12マウントとは2年近い開きがある。このあたりがどのように効いてくるかは、本文の解説に触れよう。



●撮影の条件
もともとここのタイトルは「ミラーレスでライカレンズを使う」だ。それぞれの機種でランダムなライカレンズをつけて撮影するのも可能だが、ここでは基本ボディの違い以外は、すべてを同じ条件にして撮影してみた。そうすることにより、3機種の個性がわかる。でも、本当はリコーを除いたメーカーはある意味不本意かも知れない。本来デジタルカメラははボディと専用レンズでさまざまな情報をやりとりして最終的な撮影結果がでてくるからだ。とはいってもミラーレス機のマウントアダプターをつけての撮影結果は、大いに気になるところとなる。
そこでここでの撮影レンズは、わざと古典的なライカMマウントの第2世代“ズミクロン35mmF2”1970年製(角付き)を用意した【写真1~3】。また撮影時の絞り値は開放から2段絞ったところ、つまりF4で行った。この絞りF4の設定は、ある程度全画面が良像になるところで、もともとのレンズのクセが残っている絞り値ということで、いつも画質を見るときは、どのレンズでも開放から2段絞ったところを僕は使っている。
ズミクロン35mmF2の装着。リコーGXR+A12Mountでは、もともとライカMマウントであるからそのまま取り付けた。ソニーNEX-7には宮本光学製のレイコールのソニーαE→ライカMマウントアダプターを介して、フジフイルムX-Pro1には、やはり宮本光学製のレイコールのLM→FXマウントアダプターを介して取り付けた。なお、X-Pro1にはフジ純正のライカMマウントアダプターが最近発売されたが、ここでは発売のタイミングから宮本光学製を使ったが、画質評価にはまったく問題ないはずだ。
撮影は三脚を立て、それぞれのボディを付け替えて同じ位置から行った。露出は、絞りF4の絞り優先AEで行っている。それぞれの機種の色再現、シャープなどの設定はすべてスタンダード(デフォルト)で、ホワイトバランス、ISO感度はオートに設定し、撮影はすべてJPEGとした。 ピント合わせは、すべてマニュアルであるが、ライブビューで画面中央のライオンと馬が見える紋章をマニュアルアシスト機能により拡大してピント合わせを行った。拡大率はそれぞれの機種に依存するが、実用上個人的にピントの合わせやすい拡大率を選択した。なお、EVFの解像度は3機種でまちまちだが、実際のピント合わせは、必要部分を拡大して行うが、目の分解能の問題もあり、画面全体が見渡せる場面での解像度の違いはあまり気にならなかった。
2. 操作方法・メンテナンス・修理のポイント



●画質の評価
画質の評価は、ピントの確認のために複数枚撮影した中から、画素等倍にモニター上で拡大したものを見て、一番ベストな1枚を選んでいる。また各機種の撮影結果データはまったくいじることなく、そのままPhotoshop CS4で開いてインクジェットプリンターでA4、A3ノビにプリントして行った。この場合のA4は顔料タイプで、A3ノビは染料タイプで行っている。これはプリンターによる変動の差異を見るためだが、実用上は面状の違いと微妙な色調の違い以外は大きく変わるところではない。
もちろん各撮影データは、Photoshop上で細かな調整をすればよりベストのプリントとなるのは間違いないが、調整の違いがプリントの良否の判定に関わってくることもあるので、ここでは撮影したままのデータでプリントしている。このあたりは、画質評価の考え方の違いにより異論もあるかも知れないが、最近の機種はほとんど微調整しなくてもかなりの画像が確保できる。ここはむしろ、プリンターの設定をオートにすることにより、ある程度は統一した自動処理が行われていると思っている。ただし、ここでお見せするのは撮りっぱなしのデータであるので、その点ご了解いただきたい【作例1~3】。
■A4サイズにプリントしてみると
A4にプリントした限りではそれぞれの機種の違いを見極めるのは非常に難しい。わずかな差異を求めて見ると、一番の違いは色づきの部分だ。それも一目瞭然でわかるのは、画面左端の黄色の車止めだ。この車止めの色づきの強い順に列記すると、1)ソニー、2)フジ、3)リコーとなるが、フジとリコーの差はきわめてわずかである。実際、何人かの人々にA4プリントを見てもらったが、それぞれのカメラをあてた人はだれもいなく、唯一NEX-7をあてた人が1人いた。この人はソニーユーザーであり、ふだんからソニーは色づきが濃いと認識していた人だ。この色づきの差は、露出レベルにすると-2/3EVという感じで、この画面からするとその露出レベルの差が顕著に表れているのは、画面中央背面の石造の建物壁面の濃さであるが、これらはいずれも調整の範囲であり、どれがベストかということではなく、むしろ好みの範囲というレベルである。
さらに仔細にA4プリントを見ると、建物左右の背後にある樹木のボケ具合が微妙に異なるのがわかる。もっとも特徴的なのはリコーで、きれいにボケているが、フジが最も深度が深いように感じられ、ソニーがその少し手前という感じだ。同じレンズで、同じ絞り値で、同じポジションにピントを合わせても、ピントの奥行き感が違うというのは、正にデジタルならではのことである。しかしこれも、どちらがいいということではなく、各社画像処理の思想がわずかな違いとなって現れた範囲であり、だからそれぞれのカメラがどうのこうのということではないと考える。
■A3ノビにプリントしてみると
A3ノビのプリントは、僕がいつもデジタルカメラやレンズの画質を見るときの基準にしているサイズだ。ただし、いつものことであるが、それ以前にA4プリントを行っているので、その部分との比較ということになるが、A4サイズで目を皿のようにして見ても、特に問題があるわけでなく、それはA3ノビでも同じということになる。このことは、各機種とも高画素になったからではないかと思う。実際、A3ノビで、3機種がどのようなプリント解像度を持つのか表に示して見たが、有効画素数1230万画素と最も画素数の低いリコーでもA3ノビで229ppiとなるので、必要十分な解像度となる【表1】。このプリント時の必要解像度はどのくらいかということになるが、少なくとも補間処理を施さなくて、特に問題ない解像度はインクジェットプリンターでは120ppiぐらいと考えている。

これは実際やってみればわかることだが、100ppiを下ったあたりの解像度から被写体によってはジャギーが目につくようになる。これも、Photoshopやプリンタードライバーで補間処理を行えば目立たなくなる。したがって、実は800万画素を超えたあたりのデジタルカメラから写真サイズで全紙相当、A2相当の拡大が可能となる。もちろん、これらを上回るだけの解像度を持つカメラで撮影して大伸ばしすれば、それだけ解像感のあるプリントが得られることは間違いない。その点においてはソニー>フジ>リコーの順に解像度は高いので、それだけ有利になる。ただし、大きくプリントすると鑑賞距離も遠くなるので、話はまた別になってくる。いずれにしても、今回使用したリコー、ソニー、フジの3機種は、全紙相当、A2判程度の拡大プリントに十分耐えられる解像度を持っていることになる。



■3機種のダイナミックレンジを見てみる
というわけで、同じズミクロン35mmF2を使った限りでは、リコーGXR+A12Mount、ソニーNEX-7、フジフイルムX-Pro1は、微妙な発色傾向の違いを別にすればA3ノビに拡大プリントしてもその差はほとんどわからないほどであった。事実、3機種のA4プリント、A3ノビプリントを各方面の人に見てもらったが、どれがどれだかわからないといった人がほとんどだった。
こうなると何か違いを見つけださなくてはいけないというので、行ったのが「ダイナミックレンジがわかる撮影」である。これはたまたま手元にあった透過型のステップウエッジ(光楔)を、蛍光灯型のスライドビューアーの上に載せて、ギリギリ近づけるようにライカスクリューマウントの50mmF2.8の引伸ばし用レンズを取り付け、ヘリコイド中間リングでピント合わせを行い、絞りF5.6に設定し撮影を行った。
このステップウエッジは、本来は感光計(センシトメーター)の中にセットしてフィルムの感度と特性を読みとるためのものだが、フィルム時代を終えたいま改めて引っ張り出して活用してみた。当初は、撮影結果をモニター上で拡大して視覚的に何段読めるか確認し、さらに同じデータとして1枚のデータにして組合せた後にプリントして、やはり視覚で何段確認できるかを行って3機種のある程度の傾向を読みとることはできたが、より具体的にビジュアル化できないかと考えて、図表化してみた【図1~3】。
まず、ステップウエッジは25段あり、それぞれは5mm間隔で、1段が濃度で0.15Dずつ変化している。つまり0.15D×25=3.75Dの濃度幅(階調幅)を持つわけだ。一般的にフィルムも印画紙も、濃度幅3.0Dを超えるものはない。そして、このステップウエッジの撮影結果(濃度)を読みとるのには、Photoshopのヒストグラム情報からRGBを読みとることにした。マウスで撮影されたステップウエッジ部分にポインターを置くと、簡単にRGBのヒストグラム数値を読みとることができる。ステップウエッジには5段ずつに切り込みがあって、ポジションも簡単に特定できる。また、黒く境界が判別の付かないところ、白く判別の付かないところは、ポインターを順次走査していくと、大幅に数値が変化するゾーンでてくるのでわかる。さらにそのときのポインターの位置はXY座標で示されるので、座標数値からも場所を特定することができる。
このヒストグラムの各RGB数値を読み取り、エクセルに入れ込み、折れ線グラフ化してみた。結果として、みごと感光材料の特性曲線のようなグラフを描くことができたが、似て非なるものであって、これは撮像素子の特性曲線と呼べるかはわからない。ただしこれによってそれぞれカメラのダイナミックレンジを読みとることができると考える。この結果からは、リコー>ソニー>フジの順にダイナミックレンジが広いことがわかる。一般的に画素ピッチが大きいほどダイナミックレンジに有利だともいわれているが、画素ピッチは、リコー>フジ>ソニーの順に大きいわけで、画素数にズバリ比例するが、ダイナミックレンジと画素ピッチはこのグラフで見る限りは比例しないことになる。とはいっても、実写結果ではこの違いがどのように効いて来るかは微妙で、少なくとも今回の比較撮影結果からはわからない。
●リコー・ソニー・フジどれを選ぶか
今回の比較からわかったことは、限定された条件の中のことではあるが、少なくとも光学ローパスフィルターのあるなしは撮影後の画像からは比較判別できなかったこと、同様にベイヤーフィルター配列とX-トランスフィルター配列もその差異は認められなかった。これは僕自身の比較方式の甘さかも知れないが、一般的に撮影して大きくプリントするという実写撮影方式であるのでこれに勝るものはないと考えている。ただし、その結果がどれだけカメラの差異を引き出せたかというと疑問だ。
一例として、今回はテストレンズをズミクロン35mmF2としたが、これらのカメラでさまざまなレンズをつけて撮影していたら、NEX-7では35mmより短い焦点距離のライカ用レンズを装着すると画面左右にマゼンタ色の偏色が認められた。このようなことは、ライカM8、M9にても認められていた現象だが、実際は35mmより長焦点距離を使うことが多いようなので、あまり気にしない人が多いようだ。もちろんE18-55mm F3.5-5.6 OSSなどの純正交換レンズを装着した時には焦点距離35mmより短くても、そのような偏色は発生しない。いずれにしてもソニーの技術力をすればやがてはファームウエアアップで解決するのではないかと思うし、ぜひそうして欲しいものだ。また、今回はあまり話題にしなかったが、ライカのレンズという意味では対称光学系のスーパーアンギュロン21mmF4を取り付けることができるのはリコーGXR+A12Mountだけであるとかさまざまだ。
このほか、各システムともさまざまな交換レンズやシステムをもつわけだが、その本来の純正レンズをつけたときの性能、たとえば歪曲や各種収差の発生除去、高感度時のノイズ発生の具合(高感度ではいくつまで実用できるか)、レリーズタイムラグ、オートホワイトバランスの確度などの性能面に加え、大きくはカメラデザインであったり、各メーカーに対するユーザーの自身の好感度や価格なども関係するわけで、一概にどれがいよいとかはいえないのが現実だ。(●^o^●)
