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クラカメ探検隊
珍しいカメラの使い方講座スパーブ編



『スパーブ』はとにかく個性的なカメラです。カメラの種類としては、120フィルム使用の6×6判二眼レフ、ということになりますが、普通一般に見るような二眼レフとは随分と違っています。 1929年ローライフレックスによって開かれた二眼レフ市場に参入するにあたり、老舗のフォクトレンダーは何もかもアンチローライの立場を貫いたこの『スパーブ』を発表しました。ローライの模倣におさまるのではなく、あくまでもフォクトレンダーとしての個性やアイデンティティを出そうとした結果です。

まず違うのがフィルム送りの方法で、ローライでは下から上へと縦に送るのに対し、『スパーブ』では右から左と横方向へのフィルム送りとしていて、そのためか裏蓋も左右に開くようになっています。巻き上げは水平につけられたラチェット式レバーで行い、フィルム自動巻止めなどはついていません。

またユニークなのがシャッターダイヤルの速度表示が逆文字で記入されていて、上から見た時に正しく読めるように小さいプリズムを取り付けてあるということです。これは、撮影の際に上から見てピントグラスの映像、絞り値、シャッタースピードと全て見ることができるようにするためです。そのために 絞りダイヤルもレンズにではなくボディにつけて上から見ることができるようにしてあります。

そして最もオリジナリティ溢れる設計となっているのが、そのフォーカシング機構です。フォーカシングは直進ヘリコイドによりますが、撮影レンズのヘリコイドの回転を、ギアによって上にあるビューレンズに連動させています。二眼レフでは撮影レンズとビューレンズの間があいているのでパララックスは避けられない問題です。特に近距離になるほどそれは深刻になります。『スパーブ』ではこのピント合わせの際のパララックス補正を実にユニークな方法で解決しています。
ビューレンズは二重の鏡胴に入っており、ヘリコイドにより繰り出されるのに従って下を向くように設計されています。さらにミラーとピントグラスを一つの箱に入れ、レンズ光軸の傾きに常に一致するようになっています。つまり、ビューレンズ、ミラー、ピントグラス全体が傾斜しパララックスを補正する仕組みになっているのです。

フォクトレンダーの堅牢さが十分にただようこのカメラは、そのメカニズムにこそ「らしさ」がつめこまれているように感じられます。

昭和12年当時、日本での発売価格はスコパー付きで355円でした。



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